泳ぐ犬たち

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その名をカキとクリという(母親の名前はモモ)。正真正銘の雑種犬だ。写真は、この兄弟犬が海水浴を楽しんでいる光景である。これで数回目であるが、すっかり犬かきが上達し、2匹の「趣味」となった模様だ。
カキとクリは、ご近所のお宅で昨年11月に生まれた。小型のカキが雌で、大型のクリが雄である。亡くなったポチの散歩コース途上に以前の飼い主のお宅があり、ほぼ毎朝、カミさんとポチがこの2匹に挨拶をし、じゃれあう関係となった。私もたまに散歩に同行し、子犬の仕草を楽しんだりしていた。本来ならこのまま2匹の成長を見守るところであるが、カキとクリが放し飼いであったため、近隣から頻繁にクレームが出るようになった。以前は犬の放し飼いは当たり前だったのに・・。「このまま行くと、カキとクリはこの地区で生きていけなくなる」という心配から、カミさんが2匹の里親探しに奔走する羽目になった。物好きの一言である(笑)。そして「おとなしいほうなら」ということで、カキは一度縁組みが成立たものの、兄弟愛から逃走して元の木阿弥に。
困り果てた末、駄目元ということで、よく行く「志摩の〜んび〜りビレッジ」の大将・市川文夫さんに「犬を飼ってもらえませんか」と尋ねたところ、「よかよ」の一言であっさり養子縁組み成立。それも2匹一緒である。しかも、市川さんの住まいというのは、引津湾を南に見下ろす斜面にあるコテージ。毎日、海をみながら兄弟で仲良く暮らせるとは、何と贅沢なヤツらだ!
そこで、その幸せのおすそ分けに与りたいと、カミさんは「昼間、大将がいないのでちょっと心配だから」という名目で、ビーフジャーキーを携え、しばしばカキとクリの元へ。そして、眼下の海岸に連れ出しては海水浴を決め込んでいる。今ではすっかり我が家の別荘か専属海の家状態である。
カキとクリの泳ぎはというと、お姉さんでしっかり屋のカキは最初に海に入る勇気を見せたが、海の面白さを知ってからは、弟でやんちゃなクリのほうがどんどん海に入り、遊び回るように。同じ環境で育っても、人間同様、性格や個性がそれぞれはっきり現れるところが面白い。
事ほど左様に、人間も犬もその向かう先は全くの不確実で、そこでの展開は縁と出会い次第の部分が多い。生類みな偶有性を生きざるを得ないのだ。しかし、偶有性との付き合いかた、与えられた環境への適応は、人間どもよりカキとクリのほうが、淡々としていて一枚も二枚も上手だ。あまり人には言えないけれど、犬かき泳法のみならず、犬に教えられることは多い(笑)。

*志摩の〜んび〜りビレッジ→ http://www7a.biglobe.ne.jp/~nonbiri/top.htm