二つで一つ ─人間関係ならぬ犬間関係

,
*芥屋キャンプ場の頂にて


ほぼ日課となった感のあるカキとクリの朝の散歩であるが、一人の時はたまに気分を変えて一匹ずつ連れ出すことがある。すると面白いことに、二匹と一匹ではガラリと行動が変化する。カキとクリで変化のパターンは微妙に異なるのだが、要は野生児としての陰がうすくなり、大人しくなるのだ。
特に、お姉さん役というかお節介役・チョッカイ役のカキは、クリがいないと「あれ、クリはまだ来ないのかな? どこに行ったんだろう?」と終始落ち着かない様子である。繋いでない状態でも私から余り離れることなく、距離を確認しながらのペース配分で、主人のお供といった雰囲気に一変する。浜辺に行っても、ふだんの疾走はなしだ。いつも二匹を連れ立って散歩していると、どうしてこいつらはこんなに元気なのかと苦笑しながら、砂浜での格闘レースを眺める羽目となるのだが、この変りようは驚きである。
そこで私はヒトとして考えた(笑)。ヒトと同様、イヌもまた、その個性や心理は「あいだ」を意識したところから立ち上がってくるのだ。人間関係ならぬ犬間関係である。カ・クの二匹が一日中くりかえしているプロレスは、それぞれの個性を磨き、「犬格」を明確なものにしていくための儀式であったというわけだ。そこで、二匹を連れ立っての散歩となると、私やカミさんという第三項が間に入ることで、カキとクリの戯れに安心感・安定感が増すとともに、「見てくださいな、わたしのほうが走るの早いでしょう」と競争意識、他者意識が芽生え、増長してくる。
カ・キのお陰で、二つで一つという関係性の不思議や本質が見えてくる。たまには、ご褒美というかお礼をあげないといけないかもしれない(笑)。
そうそう、今朝の散歩でも、クリは三回にわたってしっかり海に入り、カキとの競走で上がりきった体温を上手に冷やしていた。いつまでこの「行」が続くか、見物である。「寒中水泳犬」としてのデビューの可能性が高まりつつあるぞと、親ばかのほうの期待も高まっている。