カキ、脱出への意欲さかん

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   (カキ)                             (寒い海に向かうクリ)

年末から年始にかけ「カキ」にかなりの時間を費やしてしまった。散歩ではない。家の外への脱出防止ネットの設置・強化のためである。
カキは、脱出の天才である(笑)。これまでも家の周りで、脱出口となりそうなところには、ネットや金属網を張り巡らして、そう簡単には出られないようにしてきたつもいだけれど、最近は、脱出の頻度がまし、「S家の放浪犬」として有名になっていた。見慣れない人が来たり、クルマが通ったりすると、外に出て、吠えながら追いかける。あるいは気分展開というか「勝手に散歩」でご近所の畑を飛び回る、、、ちょっと調子に乗りすぎで、ご愛嬌ではすまなくなってきたので、策(柵?)を講じなければならなくなったというわけだ。ひょこひょこ飛び回って、クルマに轢かれる可能性もなきにしもあらず。
そこで、ホームセンターで防止ネットや鋲を求め、庭木の下に潜り込み、阻止線を張り巡らしていった。一通りできたかなということで、「どうだ出られないだろう!」と外から挑発してみる。ところが、スイスイとまさかの脱出行をやりとげて、嬉しそうな顔(!)で家の前の道を駆け出すではないか。おかしいな、ということでチェックしてみると、小さな抜け道を探しだし、まんまと脱出しおおせたことがわかる。それではと、その穴をヒモで補修するし、今度こそはと再度挑発してみる。ところが、またしても脱け出すではないか。こんなことを、この3日間で、20回ほどもやってしまった。こちらも意地がある(笑)。
さて、「クリ」のほうはというと、脱出にはほとんど関心がない。カキが必死に脱け道をさがしている脇で、ノンキで素っ頓狂な顔をしている。この個性のちがいがどこから来ているのか、はたと考えてしまう。それにしても、カキは「外へ出る」ための抜け道というか可能性を探索・発見する天才である。知覚心理学的でいうところの、アフォーダンスをらくらくと発見する様は、悔しいがお見事である。自分をとりまく環境のなかで、「出たい」という願望や意図をうまく受け止めてくれる条件や脱出の可能性(アフォーダンス)を、環境の中からさっと探す。20回も演習問題を重ねてやっていると、敵もさるもので、網と網のつなぎ目のところとか、上下がちょっとゆるんでいるところとか、脱出の可能性が潜んでいそうなところのアテをつけるのが、とてもうまくなっていく。ボーッとしているクリをよそに、この数日で相当学習したにちがいない。
心理学で難解とされるアフォーダンスの理論の実際を、カキに教えてもらうとは思いもよらなかった。人間ならず動物も、「外に出たい」という意図や意欲があってこそ、環境のなかの意味や性質、機会に気づくものだということがよくわかった。外の世界への関心がうすいクリにとって、脱出のアフォーダンスはほどんど無意味である。
当方の3日の格闘の甲斐あって、カキもしばらくの間は囲いのなかで大人しくしているしかないであろう。しかし、時間がたつにつれ、結びひもが緩むとかいった具合に環境じたい変っていくので、新規のアフォーダンスを発見していくに違いない。
ところで、最後にクリのほうもほめておこう。ボーッとしているばかりじゃないからだ。というのは、年末のある日(29日だったと思う)、とても寒い日の朝、浜辺に二匹を連れ出すと、ひと走りした後、いつものように凍りつくような海に入っていくではないか。正真正銘、「寒中水泳犬」である。零下に近い海に、二度三度分け入り、遊ぶ様をみていると、不思議と元気をもらったような気になる。人間の固定観念の枠とまったく無縁のところで、自然の力を見せつけてくれるクリもまたエライ。さてこの二匹、これから先、どう変化・成長していくであろうか。

アフォーダンス理論
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000364.html