大祖神社での「うそ替え」祭り

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大祖神社の神事「うそ替え」に出かけた。昨年・今年と二度目である。

この時期、菅原道真ゆかりの各地の天満神社で行われている祭事であることを、芥屋に来てはじめて知った。「鷽」(うそ)は天神さま(道真公)とは縁の深い鳥だそうだ。ホームページを検索すると、「鷽」の字が「学」の字に似ていることから、学問の神様である道真公の神事にとりあげれたという話も出てくる。もしそれが前面に出ていれば、ローマ神話における知恵の使者「ミネルヴァの梟(ふくろう)」に匹敵するストーリーになっていたかもしれないけれど、実際にはこの「鷽」が「学」でなく、「うそ」→「嘘」と転じてしまった。日頃われわれが知らず知らずのうちに使う「嘘」を、天神さまの「まこと」に替えていただき、正しい幸運を招くための祭りであるとのこと。

夕方5時から神社で、「今年のうそ」が販売される。1個500円也。その時、1年間、神棚に祀っていた古い「うそ」を新しい「うそ」ととりかえ、古いほうは境内のかがり火に投げ入れる。当堂は家族の数ということで4個買ったが、古い「うそ」が行方不明のため、旧年の「嘘」が家のどこかに徘徊しているにちがいない。探しださないとまずいことになりそうだ(苦笑)。

多くの人はいったん家にもどり、7時からの抽選会に再び集まってくる。買い求めた「うそ」に番号がふってあり、その番号で景品の抽選を行うという趣向だ。くじで景品一つ一つの番号を選び、読み上げていく。全部で250の「うそ」すべてに空くじなしで景品があたる仕組みなので、抽選会が終わるのに2時間はたっぷるかかる。くじの番号で景品をとりだし、「はーい、豪華景品、トイレットペーパー6個、大事に使えば3年分!」といった調子で景品が配られる。今年の最高級品は折畳み自転車だったけれど、大方は雑貨品。当堂にあたったのも、台所洗剤、ダスト・ローラー、カイロ、不二家パイの「豪華景品四点セット」。それでもまぁ、なかには地元農家の提供になる「蘭」も混ざっていたりして、抽選会は結構楽しい。じつは、蘭の一つが蘭農家(芥屋フラワーセンターの柴田重人さん)にあたってしまった。ところが、重人さんの息子さんに「うちが蘭をもらっても仕方ないので、ジャンケンで勝ったほうに差し上げます」と言われ、すかさず海岸清掃仲間のの高山さんと勝負。そしてめでたく蘭を分けていただいた。これは今年は縁起がいいかも知れない(笑)。

抽選会の間は、お神酒と温かい豚汁が振る舞われる。酒をのみ、豚汁をすすり、ストーブを囲みながら、よもやまの雑談に打ち興じる。初対面の方を含め、こうした時でないと会えない人も結構いたりで、地域での交わりにとって欠かせない。お向かいの「ライズアップ芥屋」大重さんもお誘いしたところ参加され、いろんな話ができた(このブログをご覧になっていると知り、驚くやら嬉しくなるやら)。持田さんの奥さんからは、塀の上で吠えるカキとクリが、塀のブロックを通行人の脇に落としたことがある、というヒヤッとする話も伺った。こうしたことは、コミュニケーションの回路がないと、ふうつは言い出しにくいので内にこもり、なかなか言ってもらえない。ありがたいことだ。早速対処しないといけない。

あるいは、芥屋に戻って10年、九大OBで空手部の監督をされたこともあるという中村さん。犬の縁で、カミさんのことをよくご存知とのこと。「あの人のダンナさんかね。おたくの奥さんはエライよ」と言われてしまった。婦唱夫随。最近、よくある話だ(嬉笑)。

さてさて、最後はかがり火で燃やせるとはいえ、この一年、「嘘の貯金箱」がいっぱいにならないよう、気をつけることにしよう。



【天神さまと鷽替えの神事】(日本芸術文化振興会のホームページより)
古来より、天神さまゆかりの鳥として親しまれている「鷽」(うそ)は、首からほおにかけて美しい紅色で頭と尾が黒く、背や腹はネズミ色の小鳥です。平素私達が知らず知らずのうちに使う「嘘」を、天神さまの「まこと」に替えていただき、正しい幸運を招く意味から初天神の一月二十五日に、この鷽鳥を木彫りにした「鷽」を新しい「鷽」と取り替える神事が「鷽替え神事」です。もともとは、神棚に供えておいた「鷽」を「替えましょう」「替えましょう」と呼びかけて、手から手へ、取り替えてゆき、凶事をうそにして、幸運に替えることを念願して行われたもので、江戸時代はじめから始まったと云われています。現在では、凶事をうそにして幸運に替える開運のお守りの意味から、受験生の受験のお守りとして求められる方も多いようです。
 *http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/197.html


(「うそ」の本来のかたち)