「うごく心、ときめく体」に出会う


音楽劇「小さな ちいさな 風の中の賢治たち」の練習および本番を観賞した。目黒実さんがプロデュースされている宮沢賢治プロジェクトの第1弾で、九州大学ユーザーサイエンス機構子どもプロジェクトと(特)子ども文化コミュニティーの共催事業である。
子ども文化コミュニティーの「遊びと学びのコミュニティースクール」に参加している子どもたちが、音楽・舞踊・演劇・美術などの領域を超えた活動をされている神崎由布子さんとともに、1月から4回のワークショップを通してつくりあげた、踊りと朗読と遊びの世界が披露された。素材となったのは宮沢賢治の「雪渡り」。
4歳の幼児から小学生、中学生、高校生、大学生、そして社会人まで含めた40名弱による躍動感あふれる動きがステージにあふれ、子どもたちのキラキラとした表情がホールをあたたく包み込んでくれた。踊りのバックミュージックがサルサというのも、子どもたちのパワーを大いにに引きだしてくれたように思う。
午前中の練習では、神崎さんの巧みな指導と振り付けによって、僅か1時間半ほどの間に、子どもたちの身体と気分のチューニングから始まり、重要なポイントのチェックがとんとんと進み、子どもたちのテンションが本番に向けて高められていった。そして最終的には、練習の時はいくつかの不安をかかえていたのが、本番でバシッと決まったのには感心してしまった。
終了後のあいさつで神崎さんが「これまで4回のワークショップで、子どもたちの声や表情がどんどん変わっていくのに幾度も感動を覚えた」と言われたが、最終練習と本番の間だけでも、その変化がはっきりわかるほどに表現者としての子どもたちの存在感が光っていた。
それにしても、みずから俳優・ダンサーとしても活躍されている神崎さんの、子どもたちをぐいぐい引き付け、「うごく心、ときめく体」(彼女の表現です)のスイッチを入れ、チカラを引き出していく様はお見事だった。内なるチカラを外に(e-)引き出してあげるのがでエデュケーション(e-ducation)の役割だとすると、神崎さんはまさに教育の原点にかかわる役割を果たしておられることがとてもよくわかった。ご一緒した田村馨さんが、すかさず「今度、講義でタップや発声のワークショップをやってみようかな」と言っておられたのは言うまでもない(笑)。
客席とのコミュニケーション(劇の中で全員が観客と握手をして回るというシーンがあって、客席も子どもたちと心地よい一体感を共有することができた)を含めた今回の舞台経験が、子どもたちのこれからの成長プロセスにどのようかたちで発芽していくのか楽しみだ。10年後、「あん時のこと覚えてるかい」と、彼ら・彼女らに会って聞いてみたい気がする。

*子ども文化コミュニティーhttp://www.kodomo-abc.org/onngakugeki-happyou.html
*田村馨さんによる紹介→ http://blogs.yahoo.co.jp/kaorutamu/47403852.html