カキ・クリ異変

花火があるというので急いで家に戻ると、カキとクリの様子がおかしいというのだ。カミさんによると、15時頃から、大会の準備で試験花火があがったり、周囲がものものしい雰囲気になったりで、恐怖感がつのったのか、台所脇のデッキの下に潜り込み、出てこなくなったという。花火の最中は、轟音と祭のどよめきに完全に怖じ気づき、微動だにしなくなった。人間にとっては目出度いお祭りも犬にとっては迷惑千万で、まさに「納涼」大会となったというわけだ。
昨夜は夜鳴きもなく、朝まで静かであった。珍しく二匹よりそっていたようだ。
いつものように朝5時、「祭のあと」を確かめてみようとの思いとともに、二匹を散歩に連れ出した。そして早速、二匹の異変に気がついた。ふだんだとぴょんぴょん跳ね回って喜ぶのに、いずれもしっぽを下げ、警戒しながら前に進むという状態なのだ。昨夜の花火のトラウマがここまで尾を引くとは、予想外もいいとこだ。それでもいつものように、クリはつなぎ、カキはフリー状態でしばらく行くと、ふだんはあたりを飛び回りながらついてくるカキの姿が見えない。少し気にはなったが、おそらく怖じ気づき家に戻ったのだろうと判断、まずはクリとだけでも一回りしようと浜辺へ。
昨夜からの泊まり客の親子で泳いでいる組みがあったりで、祭のあとのふだんとは全く異なる気配がたちこめていた。しかし、さすがにやんちゃなクリである、海に入り、お気に入りの水浴を二度・三度繰り返したので、やれやれ一安心ということで、浜辺をあとにした。
家に戻ると、カキはひと足早く戻っていた。やはり、ふだんと様子がちがう。吠えは戻ったものの、弱々しい。カミさんによると、連れ出したものの、怖じ気づきすぐに引き返したという。そして、家に戻ると、クリのほうがより問題であることが判明した。まったく元気がなく、「おいで」というこちらの誘いにも乗ってこない。あげくのはては、もっとも奥まったところに引きこもった状態になってしまった。心配そうなカキも一緒だ。
カキとクリ、濃淡こそあれ二匹とも花火のショックが「トラウマ」になってしまったようだ。
昨年、花火が姪の「快癒」をもたらしてくれたが、今年は、カキとクリに「心のキズ」を残して去っていった。犬の心理学については“しつけ”とのかねあいで気にならなくもなかったが(とは言っても我が家の犬・猫パートナーは歴代、放任主義である)、犬のメンタルケアについてはまったく思いもよらなかった。しかし、人間と犬の違いはあるにせよ、心の事情はよくわかるだけに、二匹の恐れはとてもリアルに伝わってくる。しばらくは、二匹に安心感を与え、「心のベースキャンプがあるから大丈夫!」ということを伝えるようにしないといけない。傍で、カミさんはカミさんで、「花火や動物たちにとっては暴力! 来年からはやめさせんといかん!」と真顔だ。騒ぎにならないよう、こちらのほうのケア(対応)も大変だ(笑)。
 引きこもるカキとクリ