朝夕で表情を変える禅寺の妙

恐らく一年中で一番気持ちのいい季節だ。きょうは承天寺に参禅するため、5時50分に家を出て、透き通るような空気を感じ取りながら、クルマを東方向に走らせていった。すると真正面に朝日を仰ぐかたちとなって、思わず手を合わせて合掌したくなった(笑)。この美しさをしばし楽しみたいと思い、高速は使わず下の道をゆっくり走った。虹ノ松原の前後で車窓にひろがる博多湾ががまた格別だった。気分は完璧に遠足だ。
お寺に着くと、方丈(本堂)に置いてある山笠の原型・施餓鬼棚には「新米 聖一国師真前」と書かれた奉納米が飾られていた。周囲に田んぼこそなくなったものの、秋の実りへの感謝という地元の人びとの気持ちは営営と受け継がれているのだ。

座禅のほうは、いつもよりちょっと多めで10名の参加があった。ほとんどが常連さんで、気心がしれている分、座るのもリラックスモード。とりわけ、後半、きらきらと朝日に輝く洗濤庭に向かっての座りは最高の気分であった。ふーっと力が抜けていって、庭で波を描いている小石の存在とほんのちょっとだけシンクロできているような気がした。もちろん、すぐに雑念が出てきたり、ちょっと眠くなってカラダのほうが傾いだりで、「修行中の身」であることにかわりない。さらには座禅の途中、寺のラブラドール・レトリバー犬「松」と「九」が柵を乗りこえ、お堂に入り込んできたのには、内心笑ってしまった。

参加者が多かったこともあって、禅後のお茶会もとても賑やかであった。しかも、きょうは参禅仲間である葉山君の誕生日。お仲間が用意してくれた手製ケーキにナイフが入り、全員に配られていった。「禅寺での欧風誕生ケーキ」というのはとても乙なものだ。このあたりの肩肘張らないところが承天寺の魅力だ。

そして、お茶会の席で「18:30より、博多灯明ウォッチングの一環として、明日から始まる御供所ライトアップウォークに向けたマスコミ向けの内覧会が、承天寺において福岡市の主催であるということを上方に教えてもらい、即座に「夕方また戻ってきます」と返答。暗くなって寺に戻ってみると、すでに準備が整い、灯明とライトで照らし出された、朝方とは一変する幻想的な光景がそこにあった。特に、上方が普段にまして気合いを入れ描いたという洗濤庭の波模様には、こうも表情をかえるものかと驚いてしまった。玄海灘を表しているというその波が、まさに生きているかのように、青白い光のもとで、くっきりとした輪郭をもって迫ってくるではないか。自然における絶えることのない生命の流れというか、般若心経の世界を感じさせる。また、耳を澄ますと、上下に波打つその庭からは(波が描かれた庭はあくまで平面である!)、ざわざわと打ち寄せる波の音が聞こえてくるようだ。

第13回博多灯明ウォッチングは、19日(金)から21日(日)まで開かれ、御供所地区では様々なイベントが行われる。僕も、20日は「灯明献上道中」ということで着物を着て、灯明をかかげ夜の寺町を練り歩く予定だ。

 *博多灯明ウォッチング→ http://toumyou.hakata.net/news.cgi