夏の断章

朝夕の空気に涼が混じり、虫の音の主役が代わり、たなびく雲の色調が一変した。厳しかった夏も終わりを告げ、一気に秋のおもむきだ。時間の流れはやむところがない。押し寄せては過ぎ去り、過ぎ去ってはまた押し寄せる。しかし、生命のリズムはゆらぎとともにパターンを描き、新しい秩序を紡いでいく・・・・
久しぶりの書き込み、夏の記憶を断章としてとどめておこう。小学校の時によくやった、夏休み終了直前の、「まとめて絵日記」モードだ(笑)。

9日、娘はるかが帰福。仕事の疲れがたまったカラダを休めるための、文字通りの夏休みである。帰る家があることの幸せがオモテに出ていて、こちらも嬉しい気分となる。思いっきりダラケルがいい。当方は、7月19日からスタートさせたオムニバス授業「ユーザー感性学入門」が無事終了。酷暑のなか、30人近い方々に、4週間にわたり、土曜日の午前・午後と長時間おつきあいいただき、感謝感激であった。学びが生きていく上で究極の喜びであり、報酬であることい改めて気づかされた。
10日、何をしていたのか、忘却(笑)。
11日、九州経済産業局での“ソーシャルビジネス”公募事業についてのミーティングの後、九州経済連合会でデジタルコンテンツ産業育成検討部会の会合、そして、福岡市の都心再生課とのミーティング。いずれも、地域にしっかり根を張った、新しいビジネスやビジネスに向けた動きをどう展開していくかが主要な論点。手元・足下の資源の新たな光と着想を与え、一つに結びつけて新しい“かたち”に仕立て上げていく作業は、先が見えないだけに面白い。酒造りでいえば「発酵」のプロセス。「神のみぞしる」複雑系の世界だけれど、ある日突然なにかが発現するかもしれぬではないか。
12日、九経調60周年記念事業の仕事で、目黒・八尋・石田の3名ともに鹿児島へ。初の九州新幹線(部分開業)、初の新鹿児島駅を経験した。鹿児島は10数年ぶりか。車中、お昼はどこで? という話題が投げかけられたが、ためらうことなく「久しぶりに“のぼる屋”のラーメンが食べたい!」と、有無をいわさず皆を“のぼる屋”へ一行ご案内。20年ぶりぐらいか。しもた屋のつくり、腰の曲がったお婆さんが給仕するお店で一杯1000円の理由はいかに、浅からぬ縁の森進一との関係の真相はかに(デビュー前、出前アルバイトをやっていたらしい)、この味は一体ラーメンか中華そばか・・・と元祖鹿児島ラーメンは、十分すぎる旅の話題を提供してくれた。“のぼる屋”のラーメンはメディア(媒体)である。では、メディアにのっけて売られているものはというと、思い出か、驚きか、はまたまみやげ話か。


13日は、大学に出て、たまっていた書類整理とデスクワーク。
14日・15日は、夏季休暇をとり自宅でのんびり。そこに、「メルヘン大使」宛に、夏バテ対策のカウベルランド「豊後玖珠牛」が届いた。エネルギーを充填し、暑さに負けず、なお一層のご活躍を、という挨拶が添えられていた。感謝。早速、いただいたなかの一枚が、ステーキとして大使令嬢の胃袋に消えた。残りの2枚は、いずれゆっくりといただくことにしよう。
 *玖珠牛のご用命は→ http://www.cowbellland.com/


16日、盆踊り・仮装大会が公民館ひろばであるというので、会場へ。ドイツワインをさげ、海の家・磯の屋での「糸島カレーフェスティバル」前夜祭に乱入。実行委員長の松っちゃん、ヒロ、芫ちゃん、よしも、カレー、シンタロー、、、と総勢15〜16名がすでに出来上がっていた。飲んだ、飲んだ。海の風を感じながらの酒とおしゃべり。


17日、日付がかわり1時間くらいたって、ふらりふらりと家路についた。すると、家の前の道路は、パトカーや検問中のお巡りさんでただならぬ雰囲気。聞くと、夜9時過ぎ、我が家から20メートルくらいのところで、ひき逃げ事件があり、被害者は亡くなられたという。しかも、その方は地元の方というではないか。酔いが覚めてしまった。明けて、お隣に尋ねると、亡くなられたのは、散歩の時にたまに挨拶をするYさんであった。ご冥福を祈るしかなかった。朝方から警察の一斉聞き込みも始まった。
この日は、糸島カレーフェスティバルの当日。カミさんとはるかを伴い、会場となった「磯の家」へ。12時開鍋の直前であったが、すでにイベントは始まっていた。15の出カレー者(インドレストランあり、豚串屋あり、和食屋あり)が合計29種類のカレーを持ちより、参加者は好きなカレーを好きなだけ食べ回る。米は寿司職人のシンタローが大釜で炊く。400人を超す人数だから、フル回転である。カレーはというと、本場インドカレーはもちろんのこと、鯛カレー、禅カレーと多種多様。まさに、「夏のカレー」の醍醐味ここにあり。15時頃には退散したが、聞くところに寄ると、フィナーレでは、芫ちゃんの裸おどりあり、××さんのカミングアウトありで、盛り上がったという。


18日は、ふだんどおり仕事場へ。と言っても、夏休みモード横溢。昼過ぎ、四島司事務所に伺い、アートを生かした、産学官協働の人材育成プログラム立ち上げについて相談にのっていただいた。前途は多難であるが、その必要性について改めて確信した。夕方は、高校の同窓生の集まりで大名「あんねい」へ。6人が集った。同窓会にはとんと足が遠のいていたが、とても懐かしい一時をすごした。それぞれにいい味を出している。歳をとるのは悪くない。また、国政への返り咲きを狙っている民主党の古賀君が、当堂の中学時代の同級生とたまたま会ったとかで、その名刺をもってきてくれた。山口信一君。さっそくに連絡をとり、近く会うことに。
19日、昼間は大学院設置にからむ文部科学省向けの資料作成に終われ、それを片付け、夜9時から大名での「紺屋2023」関係者顔合わせサロンへ。田村さんは既に到着済み。みなとしばし、談笑した後、目黒さんが迎えに来て、ひさしぶりにKO7の“夜のミーティング”ということで、バー「柳」へ。まどろむtam-tamを横に、目黒さんとハイな気分でカクテルを2杯。
20日、日記すべき特段のことなし。
21日、朝一番の飛行機で東京へ。午前中は経済産業省で「KANSEIカフェ」のミーティング。経産省の担当者から、向こう3年を「感性価値創造イヤー」を宣言したものの、財務省からうまく予算を引き出せないで苦慮しているとの正直発言も飛び出し、「中小企業関係をはじめ、既存予算をじょうずに読み替えたり、つないだりしていかないと“国民運動”にならないのでは」とアドバイス。新しい概念が世間で効力を発揮していくためには、幾多のハードルが控えている。
 午後は、感性マーケティングの第一人者、小阪裕司さんが主催されるオラクルひと・しくみ研究所のセミナーに特別に参加させていただいた。浜松のある酒屋さんの経営実践を、小阪さんがたっぷり2時間近くをかけ解剖していく。経営者には、整理しない生の材料をもってきてもらい、それをもとに小阪さんが一つ一つの実践の意味を紐解いていく。売らんかなの商いではなく、「コミュニケーションの手段」として商品をとら、自己成長の機会として捉えておられる様に共感を覚えた。お客さんの前で試されているのは「自分らしさ=感性である」という小阪さんの指摘に深く納得。
夜は、同研究所主催のサマーカーニバルナイトに参加。銀座のライブスポットを貸し切り、生バンド付きである。狙いは「40代のディスコ・パーティ」だそうで、とても楽しかった。踊りながら、いろんな経営者と交流。脳科学者の黒川さんも大ブレークしていた。2ステージの間には、「それではこれからトークショーをやりましょう」ということで、突然ステージに上げられ、小阪さんと2人でしばりクロストークというオマケもあった。


22日、大学に一旦顔を出し、加藤君とともに唐津市へ。行政と大学との連携プロジェクトについて、総合政策部長と意見交換。市の後は、どこかで寿司でもというので、教えられるままに「つく田」へ。これが江戸前の最高の味。うなってしまった。また、大将の職人かたぎのきりりとした雰囲気、すべてに配慮がゆきとどいたお店の風情も最高である。(数日後、職場の仲間に聞くと、全国的にも有名なお店とのこと)
23日、久々に海岸清掃へ。そこで、前日夜にひき逃げの容疑者が逮捕されたことを知らされた。家に戻り、インターネットで確認。現場に落ちていた車のバンパーの破片(約10センチ四方)から車種を特定。警察官約30人が約1週間かけて付近の同型車1000台をしらみつぶしに当たり、事故車を割り出していったという。容疑者は27歳で、芥屋と隣接する野北に住む青年で、宅配Y社のドライバーとのこと。ご近所から、「芥屋の人間でなくてよかったね」という声をいくつか聞いた。加害者にしても、ちょっとしたはずみでで事件の当事者となり、人生行路が大きく変わる。この世は、不確実なことだらけだ。


24日、どうも朝から体調が悪く、一日、家にこもっていた。疲れがたまってしまったようだ。
25日、博多織デベロップメントカレッジの授業の、本年度4回目の授業である。業界サーベイということで、(株)岡野の直販店「博多一十」に出向き、学生と岡野社長・角店長の話をたっぷり聞いた。しっかりとした状況認識と事業哲学、経営戦略をもった岡野社長の展開は、何度きいてもすごい。そうそう、岡野では毎年一冊ずつ「ブランドブック」を刊行することになったそうだ。今年のテーマは「太陽」とのこと。授業の前に、インタビューを受けた。当堂も写真つきで登場する予定だ。


26日、カラダの重さを感じながら、ばたばたと仕事をこなし、夕方から天神イムズ「創造の森」で、「いきいき長寿社会まちづくり」のミーティング。大牟田から、大谷さん、池田さん、内田さんがわざわざ来ていただいた。既成の観念や枠組みに囚われない、新しい福祉のありかたを「ひと、こころ、まち」のありようとして探求していこうよという意志を確認しあう、とても気持ちのいいミーティングとなった。ミーティングの後は、オーガニック・レストランの「宙(SOLA)」で、おいしい料理とワインに舌鼓をうった。談中、グループホームを拠点に認知症ケアの最前線で働く大谷るみこさんが近く、モギケンの「プロフェッショナル」に出演予定との話を聞き、無性にうれしくなった。モギケンに“よろしくメール”を打つことにしよう。