法律家の卵たち

福岡大学法科大学院ロースクール)のオムニバス講義「地域と法律家」の一環で、「感性の時代」というテーマで講義をした。コーディネーターは、ロースクール開設ともに九州大学から福大に移られた森淳二郎先生。お客さんは、3年生40人である。
終了後、全員の感想文をいただいたが、“自由(自己決定)は幻想にすぎない? ─法の根拠はどこに”という挑発がもっとも受けたようだ。挑発のベースは、歩くとか手を動かすといった行動は、本人が意識して行動をとろうと決める前に、既に既に行動を引き起こす脳神経の活動が始まっており、実際の行動も意識の前に行われている、というベンジャミン・リベットの実験結果である。個人の自己決定を前提とした法規範の範囲内で勉強をしている学生さんたちにとって衝撃的な問題提起となったようだ。感想文を読みながら、少しだけ、申し訳なかったかな(笑)という思いがよぎった。
講義終了後、森先生と雑談。法曹人口を増やすということでスタートしたロースクール。多様なバックグラウンドをもつ弁護士を育成していくという触れ込みであったが、各地に乱立したこともあって、早くも生き残りに向けたスクール間競争に追われているという。教育現場では、「幅広い教養をもった法律家の養成」という設立当初の理念をとりあえず脇におき、司法試験合格に向けた手取り足取りの指導に追われ、社会における法律家の役割などについてじっくり議論する時間をとる余裕はまったくない状況とのこと。
そうした中での、オムニバス講義「地域と法律家」は貴重な試みだと思う。