「虎」とめぐりあう

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二日遅れの日記なり。
一昨日、福岡のデザイナー集団で、各地のデザインコンペで受賞を重ねている「Desing Ship TORA」(虎)の話を聞くべく、福岡デザイン専門学校を訪問。ユーザーサイエンス機構の田村さん、石田君・楢崎君、それから博多織ディベロップメントカレッジに学ぶ宮川アリナさん、村田美帆さんと一緒だ。虎の中嶋尚孝さん、中庭日出海さん、上野優さんの苦労話をたっぷりと聞き、その後みんなで「たて石」へ。
虎のプロデューサー的な役割をされている中嶋さんの、人材育成や若者のキャリア開発、地域での起業家活動に向けた、熱く、しかもクールな話にはまり込んでしまった。また、中嶋さんのもとで睡眠時間を削りつつ、デザイン創作に励む二人の若者らのキラキラした顔を楽しみながら、じつにいい酒を呑んだ。
4年生大学のデザイン系学部卒業生と異なり、専門学校では卒業後にデザイン領域で仕事の機会をつかむのは至難のワザであるとのこと(もちろん、容易に想像がつく)。であるならば、自分たちでチャンスをつかんでいくしなかい、自分たちの“武器”を磨くしかない、となったそうだ。そこで、「世の中から振り向いてもらう」→「プロの参加するデザインコンペに作品を出そう」ということで、中嶋さんが学校のクラブ活動のメンバーに働きかけて結成されたのが「虎」であるとのこと。そして中嶋先生のエライところは、分散的に「個人」で行動するよりも「集団」で賞をとりにいったほうが確率が高まり、ゴールへの早道にもなると判断し、虎というデザインユニットでの活動を推し進めていったところである。以前、建築において「象設計集団」が数々の話題作を生み、建築シーンに刺激を与えていったことがあるが、「虎」の志向性はそれとも通じることがある(中嶋さんによると、デザイナーがユニットで作品を発信していくことはほとんどないそうだ)。
もちろん、ほっておいて人は育つわけがなく、授業終了後(19〜22時)クラブ活動サポート、土日のおい込み作業アドバイス、寝食と家庭(笑)を忘れた中嶋さんの膨大なエネルギー投入があってのこと。話を聞きながら、頭がさがりっぱなしであった。
対する博多織ディベロップメントカレッジはこの春に開校したばかりの学校である。伝統工芸の新しい担い手育成をめざし、博多織工業組合が中心となって設立したもので、現在、第一期生12人が学んでいる。私と田村さんは共同の講座をもつかたちで、伝統工芸の世界に飛び込んできた若者たちとのおつきあいをしている。12人の若者たち(といっても平均年齢は33歳であり、それぞれに社会経験をもっている)がどのような世界を展開していくのか、もちろん未知数である。けれども、「虎」のことを紹介した記事に接したときに「博多織カレッジが習うべきモデルはここにある!」と直感し、デザインと伝統工芸という相異なる2つの学校と若者が出会う機会をつくりたいということで、大勢でおしかけたという次第である。
宮川・村田の二人にとって、とてもエキサイティングな時間となったようだ。もちろん同伴者である我々も ─ 。「一つ上の世界をめざして頑張る」「10年計画でじっくり取り組んでいく」「思わず足がとまりホッとした気持ちになるデザインを生みだしたい」「風土のなかで育まれた発想や伝統をカタチにおとした時に、世界と戦える作品となる」・・・と、これでもかこれでもかという「虎ワールド」に、ほんとシビレてしまった。
「たて石」では、「虎軍団」と「博多織」で“粋プロジェクト”を一緒にやろうという話が盛り上がった。「歴史は酒場で生まれる」(笑)をぜひとも証明したいものだ。

http://www.designshiptora.com/index2.html