住民懇談会に出て思ったこと

今日は休みをとっていることもあって、公民館での19時からの住民懇談会に初めて参加することができた。
芥屋、引津、可也、桜野という4つの行政区ごとに、町長以下の執行部が地区に赴き、町政の課題を説明し、地元住民との懇談を行うというものである。参加者は7〜80名といったところか。しかし、公民館の会議室は一応埋まってはいるものの、聞くところでは町職員が半分近く占めていたとのことであった。
末崎亨町長の挨拶のあと、各担当課長から「町の財政計画」「行政改革の推進」「公共下水道」「学園都市づくり関連事業」「協働のまちづくり推進」「糸島1市2町の合併協議」といった課題について説明があり、その後の懇談という流れで進められた。町政全体にわたる説明と懇談を2時間でというのは、そもそも無理な話ではあるが、参加者の質問を通して、どんな課題が関心をもたれているのかがそれなりに理解できた。
やはり、財政状況が相当に悪化している点についての理解の共有と対応策についての町をあげての議論が、もっとも重要なように感じた。平成12年度に70億円の規模があった財政が、今年度は50億円と7割水準にまで落ち込んでいるという。このギャップは、一時の投資抑制や経費削減だけではとても解消できないのではないか。もう一段の財政規模縮小も想定しておく必要があろう。そこでまず、固定費の支出構造を見直し、徹底したスリム化を実現し、その後で政策的な予算配分の優先順位と中味を洗い直す必要があろう。そのためには、透明性の高い議論を町民とともに行い、既得権と成長神話に縛られたこれまでの発想をリセットしていくことが求められているのではないか。
個人的には、町・議会・住民の役割分担を見直して、身の丈にあわせたやり繰りを工夫するしかないように思う。その重要なポイントの一つは、硬直化した「議会」の位置づけであるように思う。町会議員が町内有力者にとって格好の職業となり、特定利害の主張・誘導・調整役としての機能に留まっている状況をどう変えるかだ。志摩町のような、1万8千人たらずの町の行政には「代理仲介型の立派な議会」より「住民の直接参画方式」のほうが、よほど効率的・効果的なように思う。議員を名誉職(無報酬=給与ゼロ。行動費は支給)にして、住民直接参画のお世話役にしたらどうか。今の各区の自治システムを強化するために、例えば区長・副区長制度を導入して、町会議員を兼務してもらうという手もあろう。名誉職となれば、「不名誉職」の烙印を押されないよう、町の発展策に真正面から向き合わざるを得ない。役場の職員にしても、どうしても専門知識が必要な部分やプライバシーに関わる部分は別にして、NPOやボランティアで担える部分が少なくないように思う(もちろん、これは雇用問題を解決しながらでなれればならないのは当然である)。いずれも、議会制民主主義の本家である欧米においては、既に広範に取り組まれていることを学ぶべきであろう。
合併問題は、こうしたことを全町的に議論するいい機会だと思う。糸島1市2町の首長は7月28日、2009年度までの合併を目指して協議を進めることを申し合わせたというが、「始めに合併ありき」ではなく、「新しい地域自治・地域経営のありかた」をめぐるオープンな議論を展開していって欲しいと思う。懇談会でも複数の方々から、前回の合併協議 ─協議破産の経緯そのものについての異議や違和感の表明がなされた。
行政サービスの効率や活性化、質の確保という点では、合併ということで「大きく」するばかりが能じゃないであろう。周知のように大きい組織は、どこも無駄や不正が発生し、目詰まりを起こしている。あえて「小さく」することで、住民の意識と意欲を高め、「みんなの意見」にそって機動的に地域コミュニティーの新しいあり方を模索していくほうが、よほど理と時代の要請にかなっているように思う。「大きく」しないと実現できなものがあれば、その部分だけを1市2町で切り出して広域サービスとして提供していけばいいのだ。
糸島市」という大きな組織のもとで、役所と議会という“運転代行”による仕切りの割合を高めていくより、いっそのこと「芥屋村」として分離独立して、住民総出・住民総議論方式に切り替えていったほうが、地域のしっかり基盤づくりに長期的につながっていくと思う。