カキとクリ

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もう二週間ほど前になろうか。カミさんから、「カキとクリを連れてきたから」という連絡が携帯に入った。「泳ぐ犬たち」ということで紹介した二匹である。イヌ通いのカミさん、いつものように二匹と遊んだ後、クルマで戻ることに。事件はそれから起こった。バックミラーを見ると、弟のクリが全速力で追いかけて来ているという。そのうち諦めるのではないかと思ってしばらくそのまま走ったが、2キロ近く追走したあげく、ついに途中で息がきれ、道端に倒れこんだのだという。そこで、クリをクルマにのせ、芥屋の自宅まで連れ来たといわけだ。そして、もう一匹、姉のカキのほうを確認しに戻ったところ、今度はカキが泡をふいて苦しそうにしていたとのこと(じつは、散歩の時にフグを海岸でみつけそれを食べていたそうな)。重なるハプニングに二匹のことがふと可哀想に思われ、何かのお告げじゃないか(笑)ということで、カキも我が家に連れて帰り、飼い主の市川さんに事情を話し「ウチで飼いますから」と伝えたのだそうだ。そして、「ちょっと手がかかっていたので、それは助かります」と、話が即成立したそうな。じつにシンプルである。
しかし、犬を飼うというのは長期にわたる責任を背負いこむことである、それも一気に二匹分の。「いくらなんでも、相談なしに、そりゃちと突然すぎないか」と言ったものの、既にコトは決まっていていたのだ。いつものように、カミさんの「まぁ、なんとかなるから」の言葉に押されてしまったという次第。トホホの一幕である(笑)。
しかし、一緒に生活をし始めると、二匹同時というのがなかなかに楽しくてほほ笑ましいのだ。先代(ポチ)が気難し屋で「最後まで飼い主になつかなかった!」変わりもんであったが、この二匹、その真反対で、とても人なつっこい。じゃれついては顔をぺろぺろなめる「犬らしい犬」である。ポチとは対照的に、抑制や落ち着きといたものがまるでない、やんちゃな“ギャング犬”である。おまけに、昨年の11月に生まれたので、「しつけ」の臨界期がとうにすぎてしまっている。こうなったら「無芸」を決め込むしかないのだ。
仕切りたがりやのカキ(雌)と、ひたすらにやんちゃなクリ(雄)。この姉弟犬、一日中じゃれあい、庭で遊びほうけている。まだ、1歳にならないこともあって元気そのもの、ロープを離し、連れ立って散歩をすると、あたりかまわず二匹そろってじゃれあいながらの全力疾走。一気に軽く50メートルは走る。そのエネルギーと歓喜にみちた姿には感動すら覚える。けれども、ご近所さんは、「まぁまぁ、こんどは元気のいいワンちゃんやね。それも二匹、おたくもタイヘンやね」とあきれ顔である。
さて、これから何年の付き合いとなるか不明だが、「カキとクリの物語」の始まりはじまりである。無芸大食の雑種で遊びほうけとあっては、野田知佑椎名誠に可愛がられながら、世界の川を旅したカヌー犬「ガク」とは大違いであるが、芥屋名物としてポチ同様、我々に新しい関係性を引き込む役割を担ってくれるであろう。
そうそう、カキとクリの物語、略して「ガク物語」ならぬ「カ・ク物語」としよう。か・く、と間抜けなところがお似合いだ。

(追記)
くだんの「名無しの居候猫」であるが、カキとクリの突然の参入で居場所がなくなり、いつのまにか居なくなってしまった。カ・クのエネルギー(核エネルギー(笑))に怖じ気づいてしまったのだろう。可哀想なことをした。戻ってきたら、今度はちゃんと名前をつけてやろう。

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カキ(姉)                            クリ(弟)


泳ぐ犬たち→
http://d.hatena.ne.jp/rakukaidou/20060813

名無しの居候猫→
http://d.hatena.ne.jp/rakukaidou/20060729