根っこはつながっている!


旧知の玉井輝大(てるひろ)さんから、「みずからつくる環境を構想する会」のフォーラムを開くという案内をいただき、玉井さんの母校である修猷館高校の同窓会館に出かけた。ありていに言うと、早良区市議会議員選への出陣式である。
フォーラムは、玉井さんの京大時代の恩師である上田篤さん(『日本人とすまい』の著者)が基調講演をされ、中学・高校の同窓生で集団力学の視点から各地の地域づくりに協同参画しておられる杉万俊夫さん(京都大学総合人間学部教授)、地元で室見川樋井川の環境再生と流域圏運動を展開されている渡辺亮一さん(福岡大学工学部講師)がパネリストとして話をされた。
じつは、玉井さんへのはなむけのつもりで気軽に参加したのだけれど、それぞれのスピーカーの見識と志の高さに深い共感をおぼえた。とてもいい講演会だった。
上田先生は、教え子の出馬を応援すべく、「河川共同体と自治邦」と題したお話をされた。先生は、静かな語りのなかに、ひと・もの・情報の東京一極集中、そして、郊外大型店やコンビニでチェーン化する日本(その裏での地域商店街衰退)に強い危機感と怒りを表明された。「地方社会が安定しているアメリカをみなさい」「優れた高校や大学が地方に存在するイギリスでは、リーダーは地方で育っているではないか」。そして、かつての幕藩体制が軍も有する独立国(「藩」)によって成り立っていたという原点に立ち返り、道州制論議ではなく連邦制づくりに取り組むべきであるとの主張は、とても説得力があった。
杉万さんは、「対象(当事者)の中に研究者も内在し(飛び込み)、当事者と協同的実践を展開しつつ、知識を発信していく」というグループ・ダイナミクス理論に依拠した活動をされているだけに、実践的でシャープな視点をいくつも提示された。東京一極集中はこれまで、鉄道網を通して東京につながる「駅」を起点に物事を考えてきたつけではないか(「山」や「川」を起点とする生き方があっていい)、民力のつきあげで日本社会の病みを突破していくしかない、「風景」が共有できるような空間単位で自治の拠点や場をつくっていったらどうか、地域づくりは教育であれ環境であれ入り口はちがっても結局「根っこ」はつながっている、、、と。とくに、「風景」についての指摘は、コミュニティー再生の核として重要だと思った。
渡辺さんは、河川工学・衛生工学の教育研究活動の一方で、大学の外に出て「プロジェクトMUROMI」「はかたわん海援隊」「樋井川を楽しむ会」「ふくおか川の勉強会」等、じつに様々に活動されている。毎週日曜日は学生たちも誘い総勢40名くらいで室見川のゴミ拾いをされ、早良区のシンボルである室見川の環境づくりにあたっておられるとのこと。講演では、横浜市の土木技術者が出世・昇級を投げ捨て、ライフワークとして実現したという河川環境改善の写真を紹介された。たった一枚の写真がすべてを語るほどのいい写真だった(紹介できないのが残念!)。この土木技術者の仕事に、渡辺さんはこれからの土木技術の理想像を見ておられるとのこと。そして、私の考えるこれからの土木構造物ということで、「土木構造物は美しくないといけない」「美しい土木構造物は残る」「機能的な土木構造物は美しい」「美しい土木構造物は長く使える」の4つを指摘をされた。名言である。
阿部首相の唱える「美しい国づくり」とやらを、現場で感性ゆたかに支える土木技術者がどれだけいるか不安になるなかで、渡辺さんのような先生に出会えた学生は幸せである。渡辺さんには芥屋で取り組んでいる海岸清掃のことを紹介したところ、「海と川の環境美化交流をやりましょう」ということで話がまとまった。室見川樋井川の環境づくりチームを芥屋の海岸清掃にご招待(笑)する企画をさっそく立てることにしよう。
 フォーラムのあと、民主党の岡田元党首も駆けつけ、西新岩田屋(現在プラリバ)前で行われた玉井さんの街頭演説を聞いた。熱い決意を語る政治家・玉井輝大の堂々とした姿がそこにあった。


玉井輝大さん→ http://blogs.yahoo.co.jp/terutamai
上田篤さん→ http://www.k4.dion.ne.jp/~ueda0812/
杉万俊夫さん→ http://www.users.kudpc.kyoto-u.ac.jp/~c54175/
渡辺亮一さん→ http://wwwtec2.tl.fukuoka-u.ac.jp/~tc/suikou/suikou.htm