ものまね名人になろう!

福岡アジア都市研究所の「まち元気セミナー〜賑わい再生をめざす街あきんどたち〜」に参加した。商店街をめぐるセミナーは久しぶりだが、青森新町商店街振興組合常務理事の加藤博さんや、させぼ四ヶ町商店街協同組合理事長の竹本慶三、高松丸亀町商店街振興組合理事長の古川康造さんなど、地元商店街の活性化に奔走されている、全国的にも名を馳せておられるツワモノが一同に会するまたとない機会でもあるので出かけていった。ビジネスの論理をこえた商店街活性化のヒントがどこにあるのかを知りたいという魂胆も合って ─。
それぞれの報告を聞いて引き出した(ないしは思いついた)のは、「ものまね大好き」「多様性の魅力」「共感の伝播」「商と遊の人類学」といった言葉だ。

■ものまね大好き
加藤さんの、「商店街活性化の目玉事業である一店逸品運動というのは、静岡呉服町名店街がはじめたもののパクリです」「ほかの事業をみんなパクリです」「でも、パクリも3年やってればオリジナル、5年続ければ他所から視察にくる」と、パクリのすすめを平然とされるところが小気味よかった。佐世保四ヶ町商店街でも一店逸品運動に取り組んでおられるとのことで、竹本さんも「我々はものまね大好きです」「“YOSAKOI佐世保祭り”もものまねです」と堂々の開き直りで威勢がいい。このお二人、壇上でも互いに「君」と呼び合う同志の関係でもある。
お二人のように、“オリジナリティ”や“アイデンティティ”といった観念的・分析的な思考回路にはまることなく、商人(あきんど)の目線から、徹底した現場主義・体験志向で街づくりのニュー・ウェーブが全国でひろがっている様は、聞いていてとても気持ちよかった。

■多様性の魅力
人が人をよぶ、賑わいが賑わいをよぶという街づくりのベースに、多様性(ダイバーシティ)のもつ力についての深い洞察と理解がお三方に見事に共有されていた。加藤さんは、多様なステークホルダー(関係者)が集まり、みんなでつくる街のありかたを、学生や住民のボランティアの活動呼び込み等の事例で紹介されたし、高松丸亀町商店街の古川さんも、街に多様な人が住むことではじめて出てくる魅力とそれへのこだわりを語られた。それぞれの商店街のホームページをみればわかるように、何よりそれぞれすさまじい数のイベントを展開されており、いかに多様な人びとに来てもらうかに注力されている。これは、従来「参加」ということばで語られてきたのとは少し違う広がりをもってきていると考えたほうがよさそうに思った。

■共感の伝播
また、三商店街の取り組みを聞いていて思ったのは、街がイベントや祭りを通して人びとの「共感」回路に発火し、人間のエネルギーを発電し蓄積し伝播していいく装置として捉えられているのではないかという点だ。佐世保四ヶ町の竹本さんの、「商店街の横の病院も集客装置です、病院の患者さんにいかに街への愛着をもってもらい街に来てもらうかを一生懸命考えてます」という発言から、共感こそが究極の活性化資源であることを教えていただいた。こうした発言は、「売った・買った」「もうかる・もうからない」ではない、アリガトウという「気持ちのやりとり」が店先でしっかりと展開されているからこそできるものであろう。

■商と遊の人類学
ものまねの面白さ(学ぶ=マネるは面白い!)も、多様性の魅力(そうか これもありなんだ!)も、共感の伝播(そうそうコレだよね!)も、人間の本質から出てきた欲求であり、喜びである。そこんとこをしっかり押さえているからこそ、「商いと遊びの人類学」のツボを押させた生きた街として、リピーターを集め、街の賑わいを取り戻しつつある! こうした事例ををみると、これからのマーケティングは人類学の目線が不可欠だと思う。

ユーザーがそれぞれ多様な感性をもって感じ・楽しみ・遊ぶことのできる街や店をどうしたらつくっていけるか。言葉をかえると、人間くささとその根っこに息づく人としての普遍性を、現場でどう織り合いをつけ、マネジメントしていくか。「街の再生」に限らず、いろんな場面で共通する問題がそこにあることを教えてもらった。