サンセットライブ参加記1


3日間にわたり芥屋で繰り広げられる音楽イベント「サンセットライブ」の最終日に潜入(笑)した。といっても、ちゃんと当日券を払っての参加だ。今年で15年周年を迎えるこのライブ、糸島半島のほぼ北端の西ノ浦でビーチカフェ・サンセットを経営する浜辺大好き・音楽大好きの林憲治さんが始められたものだ。最初は店先で一日だけ行われていたのが1997年から2日間の開催、1998年から会場が二見浦に変わり、2003年から芥屋で3日間連続のビッグイベントになったというものだ。芥屋開催も今年で5回目である。それもあってか、今年は初日に限って、芥屋地区住民で55歳以上の人間は無料招待という粋な計らいがあって、近所のおじぃ・おばぁも結構な数、ライブの探検にくりだした模様だ。昨年までは「ウルサイ」と文句を言っていたあるお宅も夫婦そろって楽しそうに出かけていたとうから、人間とは勝手なものだ。
さて、ライブのほうだけど、最終日とあって、朝11:30に始まり、夜9時まで、パームステージとビーチステージという2つのステージで様々なミュージシャンが出演する。ほんとは終日エンジョイしたかったけれど、仕事をかかえていたこともあって、まずは、お昼前後の2時間ほど、音のシャワーを浴びにでかけ、ビールのみながらお昼を一人で満喫。合間に、ライブ会場内をくまなく歩いて回った。海をみながらの夏のコンサートは、なんといっても気持ちがいい。ノースリーブや水着もどきの女の子・男の子たちが、とても楽しそうに、リズムにあわせカラダをゆすっている。潜入者としては(笑)、うらやましい! の一言だ。この時ばかりは、さすがの若者たちも、ケータイの呪縛から離れ、五感を解放している様がよくわかる。そうそう、BLACK BOTTON BRASS BAND というバンドには、敷島親方が特別参加してロックを披露、コンサートを大いに盛り上げていた。相撲協会をネタに笑いもしっかりとるなど、なかなかの芸人だ。

第二ラウンドは夕食をとって、夜7時に会場に向かった。このあたりの気楽さは地元民の特権である。結果的には、メインステージであるパームステージにフィナーレまで居合わせた。ステージにはいろんなタイプおバンドやミュージシャンが次々に登場。もちろん、バンドの名前も知らなければ、どれがレゲエなのか、はたまたこれはラップなのかヒップホップなのか、皆目わからない(笑)。しかし、日が沈み、音楽が潜入者のカラダにも染みこみ始めると、これが意外とイケルことを発見した。メロディーがほとんどない状態で、特徴的な言い回し(ブツブツブツブツ)の繰り返しに、これまた独特の抑揚をつけてカラダをゆるすというのは、音楽発生の原型をなぞっているようで、とても自然な感じがした。若者が気持ちよさそうに踊っているのもムベなるかなと思考をめぐらしつつ、こちらも少しずつカラダをゆすり始めたことでした(笑)。

それともう一つの発見は、レゲエ(ととりあえずは言っておこう)が、「自然とともに元気に生きていこうぜ」と、日常のしがらみや憂さを晴らし、個人を鼓舞するための音楽だという点だ。その点、社会的な問題意識を背景にもった、かつてのメッセージソングやプロテストソングとちょっと違うように感じた。ミュージシャンたちは音楽の合間に、「神秘的で素晴らしい自然に感謝しよう」「歳をとるのは悪くない、死はこわくないぞ」「宗教にだまされるな、宗教をカネにするな、神様はそれぞれの心のなかにある」といった、なかなか憎い言葉をごくごく短めに、さりげなく語る。こうした言葉が若者たちにどう共感されているのかはわからない。しかし、そうした意識背景をもってつくられている音楽だということを知り、正直「なかなかいいねぇ」と思った。
以前、夏になると屋外ジャズライブコンサートにはよく出かけたものだ。そのノリとの違いは、ジャズはクール&ホットに場を盛り上げていこうという志向性があったけれど、レゲエの場合は、あくまでホット&ホットで、カラダ全体でその場の一体感を味あうために集まっているという感じだ。日常的な閉塞感やウダウダを吹き飛ばし、思いっきり声を張り上げ、身体性を解放し、自分を表現してみる。このオフ感覚は、現代の若者にとってとても重要な契機であると思った・・・
というオジサンのあれこれ解釈をよそに、ライブは終了予定の9時をすぎ10時まで続いていった。最後は、ミュージシャンがステージに総出で、6000人のオーディエンスと怒濤のような盛り上がり(タオル回し、ライター着火、シャボン玉乱舞、、、)となった。そして、トドメは浜辺から夜空に向けて花火が十数発打ち上げられた。
それにしても、これだけのコンサートを15回も継続して実施してきた林さんの行動力は、凄いの一言だ。実施の舞台裏ではいろんな苦労があるにちがいない。地元からの苦情に対し、ひたすら頭をさげなければいけない場面もあろう。
こうした陰の苦労に支えられ、延べ1万5000人もの若者たちが福岡県内はおろか九州内外から集まり、スキッと元気になって帰って行く ─ 。こんな素敵なイベントが芥屋で開催されることを、本当に誇らしく思う。全国に名をはせるサンセットライブの開催を、地域活性化の貴重な契機として地元がもっと活用できないものだろうか。