唐津で味わった贅沢な時間


雑誌『手の間』でその活動を知り、先日、編集長である田中智子さんとお酒をご一緒させていただいた武富勝彦さん(農業者、スローフード・アワード受賞者)のお誘いを受け、カミさんともに「唐津くんち」に初めてでかけた。武富さんが、「くんちのなかで蕎麦をつくっとります」とおっしゃるので、気軽にでかけたというわけだ。ところが、どっこい、行ってみると、そこは蕎麦のみならず、とびきりの手作り料理やワインが気前よくふるまわれる「食のカーニバル」会場であった。場所は、ざるどうふで有名な川島豆腐店の工場裏の空間。武富さんの出迎えを受け会場に入ると、2列のテーブルには、絶品の手作り料理が満載されており、まずその光景に圧倒された。ざるどうふはもちろんのこと、新米のおにぎり(最高!)、カラスミ(超最高!)、七山村のハム、干しナマコの醤油炒め、巨大なタイの煮付け、ワタリガニがめ煮、、、といやはや凄いこと。酒は、これまた最高のスペインワインが食卓に供されていた。唐津おくんちの最大の特徴は、三月(みつき)分の生活費を祭りの三日間に注ぎ込んで、親戚・知人・その友人・そのまた友人まで盛大にもてなす「三月倒れ(みつきだおれ)」とされるが、「これがそうか!」とまさに卒倒しそうであった。その空間には、食卓を移動しながら小まめにおもてなしをされている川島豆腐店の店主・川島義政さんの人柄と太っ腹が横溢していた。

しかも、ただ単に最高の料理とお酒がふるまわれるだけでなく、その作り手がそこにおられ、もてなして下さるのだ。これはもう食の快楽というしかない。ナマコ料理とカラスミは川島さん、蕎麦とおにぎりは武富勝彦さん、ハムは田部英雄さん(「燻や」当主)。そして、スペインワインやオリーブオイルのプロデュース&販売をされている金井実(金井事務所代表)さんは、名古屋からとびきり上等のワインとオリーブオイルを携えて参加され、それぞれの商品のコンセプトや特徴をこんこんと説明して下さった。
料理と、料理人の思い、人柄、そしてそのまわりに集まる人びと。みんな大いに食し談じあう。これほどに贅沢な時間はない。
そして今回、我々と同じように「食」と「人」に魅せられて集まってきたお客のなかに、東京から見えていたとても素敵なごカップルがおられ、いい感じの出会いを得た。奥様はバラの世界に魅入られ、着物を愛し、「人もうけ」を楽しんでおられる、エネルギーと感性のかたまりのような女性である。カミさんと、バラと着物のキーワードがぴったしあって、電撃的に(笑)意気投合。その横で終始物静かでにこやかなお顔の旦那様は、ボクと同業者だそう。“婦唱夫随”どうし、今後どんなお付き合いがひろがるか楽しみだ。
肝心の蕎麦はカーニバルの途中、座を抜け出し、豆腐工場のすぐ横にある「豆腐料理 かわしま」のカウンターで先のお二人と一緒に、武富さんのまかないでいただいた。もちろん、最高の香りと味だった。
いやはや、こんなに贅沢な時間が流れ、人と人の関係性が鼓動を打っている、唐津というまちの奥深さにふれることができ、本当に「ごちそうさまでした」。ただ、ちょっと残念だったのは、曳山(やま)のほうはほとんど見ることができなかったことだ。ということもあって、来年も絶対行く!


武富勝彦さん
 http://www.tenoma.net/takedomi.html
 http://www.spiral-office.co.jp/html/taketomi/13koku.html
川島豆腐店
 http://www.zarudoufu.co.jp/
燻や
 http://tanabeya.com/index.html
手の間
 http://www.tenoma.net/home.html