「峰大中年」の旅


バスを仕立て、昨日・今日と1泊2日で黒川温泉に地元(芥屋区峰組)の男ども10名ででかけた。「峰大中年様」のご一行である。福身さん、富記さん、善久さん、勝美さん、久巳さん、哲夫さん、善正さん、千年さん、政宏さん、そして私である(芥屋では同姓が多く、親戚関係が入りくんでいることもあって互いに名前で呼び合う)。49歳から69歳までのバリエーションは、まさに大中年(おおちゅうねん)にふさわしい。芥屋では、45歳を越すと中年を卒業し大中年となり、やがて老年を迎える。組の大中年有志で月2千円ずつを積み立て、2年に一度、朝から晩までの大宴会旅行に繰り出すのだ。最近でこそ、職場旅行が復活し見直されつつあるというけれど、地域でよくもまぁこんなレジャーが存続してきたと思う。地域単位でひととひとの関係を確認しあう。さすがは芥屋。いまも生命力を維持し続ける「奇跡の地域」である。
日曜日は15時すぎまで放送大学セミナーの仕事があったので、2時間をかけ一人遅れてマイカーで駆けつけた。ご一行は、すでに朝からのビールで気分も上々、「入湯手形」で露天風呂めぐりをひとしきり楽しんだあとであった。遅れをとりもどさねばと一人、黒川一とかいう大露天風呂に入り、温泉気分をしっかり注入し、宴会に備えた。
旅行最大のイベントはやはり夜の宴会。まずは浴衣と羽織で行儀よくすわり、旅館ご自慢の料理に舌鼓をうち始める。そうこうするうちに、宴会サービスのレディ3人が登場。熊本からはるばる1時間半をかけて来たそうな。すると宴席ががぜんと盛り上がり始める。しっかりお腹を満たした後はカラオケ・タイム。大中年だけあって、ハイテンポのはやり歌は一切なし、懐メロ、演歌、デュエットのオンパレードである。こちらも「いつでも夢を」と「青年時代」を歌った。もちろん、2年間この日のために刻苦精励を重ねてきたご一同に、歌にあわせたレロレロ妖しいダンス(笑)は当然のご褒美である。
二日酔い状態でお燗つきの朝食をとった後は、大観峰・日田サッポロビール園・高塚地蔵を周遊。歩きつつ、あるいは車中でいろんな話が交わされる。博多駅直行バスが往来していたという芥屋のかつての活況、前原商店街の歳末セールが何よりの楽しみで片道(10キロ)は歩いていったという思い出ばなし、学生時代の悪さばなし・・・。そして、前回は元気で参加し、今は亡き人が「あん時、そういやぁ一生懸命小銭を投げ入れ寄ったもんね」「さみしなったねぇ」というホロリばなし。人生、禍も福も転々として先はどうなるか誰もわからない。だったら今を楽しむしかない。ほろ酔い気分のなかで、「人間塞翁が馬」を噛みしめ合う。そして、「次回は誰が欠けるちゃろうか」と冗談まじりに詮索しあう(笑)。
高塚地蔵でたっぷり願をかけた後は、バスは高速をとばし帰路に着いた。しかし、大中年旅行はそう簡単には終わらない。隣まち前原の「海賊鍋」で仕上げの宴会をしっかり行うことに。すっかり出来上がってしまった善正さん・千年さんコンビの掛け合い漫才が炸裂し、「あんたらもういいかげんにせんね」との年寄りのひと言が飛び出す始末。そして、会の最後では、次回の幹事役をおおつかることとなった。
傍から見ればたわいない行事であるけれど、風呂・メシ・酒を共にする時間は「行かなきゃわからんよ」の世界。はずせない仕事が入って一時は無理かなと思ったものの、めげず参加してよかったと思う。地域に暮らすことの楽しさここにあり、である。