承天寺の怒り(17)資料編 ─ 一応の区切りとして

この連載「承天寺の怒り」も回を重ねること17回。われながらよく書いてきたと思う。しかし、ここでしばらくは小休止と願いたい(もちろん、会社側の出方によっては再登板ありだ)。小休止にあたり、資料を2点掲載しておこう。最初は、11月12日の第4回意見交換会において会社から地元に渡されたものである。「12階建C案にて事業の方向性を見出そうといたしました」とあるように、会社から出された12階建C案(高さ32.4メートル)と福岡市都市景観室の指導である「高さ20メートル」との開きはあまりにも大きい。これじゃ、お開きとなるのは当然のことだ。
しかし、お開きを申し出た会社の真意はよくわからない。このまま話をこじらせて、地元や市との関係を悪化させて不動産デベロッパーとしての、ないしは計画そのものの「評判」を悪化させ、ひいては建設予定地の資産価値を劣化・毀損させることを懸念して一旦休止しようということなのか、それとも「さすが東宝住宅」という福岡市での評判(ブランド)形成に向けたウルトラCを狙ってのことなのか・・・
二つ目の資料は、福岡市都市景観室がマスコミ向けに、この間の経緯等をまとめたものである。ほぼ半年、かなりきめ細かく対応・指導がなされたことがよくわかる。景観の保全と形成に向けた、都市景観行政として全国的に誇るべき取り組みであったと思う。願わくば今後とも、後世に誇れるような都市景観形成に向け、使命感を燃やし、指導力を発揮し続けてほしい。


<第一資料>
                          平成19年11月12日
各位

                 事業主体 東宝住宅 株式会社
                 企画・設計 株式会社 ラプロス
                 幸 建築&環境設計


     (仮)博多駅前マンションプロジェクトの方向性について


                  記

「(仮)博多駅前マンションプロジェクト」における三度の意見交換会にご臨席賜り、ご意見ご指導いただきありがとうございました。
福岡市都市景観室および地元の皆様との意見交換会を開始し、本年8月28日の第2回意見交換会において提示させていただきました「12階建C案」にて事業の方向性を見出そうといたしましたが、福岡市都市景観条例に基づく協議を整えることができておりません。今後につきましては、課題を残しておりますが、当面の間、様々な角度から事業形態も含め検討していく所存でございます。
皆様には、公表すべき計画が整い、協議再開が可能な折には、再度ご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。

以上



<第二資料>

                 記者資料 平成19年11月13日
                 都市計画局 都市管理部 都市景観室
                 計画係 711ー4395


      承天寺隣接地のマンション建築計画について


1 敷地の位置等
 敷地の位置 福岡市博多区博多駅前1丁目222番
 敷地面積  1,056.48平方メートル
 用途地域  商業地域
 所有者   東宝住宅株式会社

2 都市景観形成地区の内容
 (1)御供所地区都市景観形成地区・・・「国体道路承天寺周辺地区」(平成11年1月指定)
 (2)景観形成方針
   ア 隣接する寺社群と調和した落ち着いたまちなみの形成を図る
   イ 隣接する寺社群の豊かなな緑を活かした快適な居住空間の形成を図る
 (3)景観形成基準(高さに関して)
    寺社境内の建築物や樹木の高さを考慮するなど、寺社境内からの眺望に十分配慮した高さとする

3 経緯
 5月18日 都市景観条例第12条に基づく届出
 5月22日 第1回目の都市景観室との協議(事業者・市)
   内容:(1)景観形成地区の方針・基準に基づき、承天寺境内からの眺望に配慮した高さとして20メートルを目安に計画変更するよう指導した。
 5月30日 地元関係者が市長に陳情(地元関係者・市)
 6月7日 第2回目の都市景観室との協議(事業者・市)
 6月27日 第3回目の都市景観室との協議(事業者・市)
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地元との協議開始
 7月24日 第1回目の意見交換会(事業者・地元関係者・市)
   内容:(1)事業者からのお詫びと今後の説明方針
      (2)計画は再検討中のため提示はなく、敷地周辺整備模型による説明
      (3)次回までに計画案を作成し、意見交換を行うこととなった。
 8月28日 第2回目の意見交換会(事業者・地元関係者・市)
   内容:(1)事業者が計画3案を提示
      (2)地元関係者から幹線道路側の敷地を利用した計画案の12階建ての高さをなるべく低くするよう要望があった。
 9月25日 第3回目の意見交換会(事業者・地元関係者・市)
   内容:(1)地元関係者から事業者に対して、承天寺の意向を受けて、計画する建物は承天寺の墓から見える範囲は塀の高さより低くし、その他の幹線道路側の敷地については20メートル以下としてほしいとの要望があった。
 11月12日 第4回目の意見交換会(事業者・地元関係者・市)
   内容:(1)事業者から事業形態を含めた様々な角度からの再検討を行うため、協議再開が可能となるまで意見交換を一旦閉じたいとの申し出があった。
      (2)地元関係者は承諾。


 (*)最後段「承諾」には「同意する」というニュアンスが強いので、地元意向としては、「とりあえず聞き入れる」というニュアンスの「承認」のほうがより適切と考える(らくかい堂)。