香月泰男美術館

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しすい会バスツアーで、香月泰男の名前すら知らないまま香月泰男美術訪れた。田園風景のなかの小さな美術館だ。美術館のある三隅(山口県長年市)は彼がこよなく愛したふるさとであるという。正面玄関前には、彼が大事にした「一瞬一生」の文字が刻まれた石碑がある。
生死の境にあった抑留の地シベリアから、ふるさとにもどり、シベリア体験でえたモチーフを作品として描き続ける一方で、台所の宇宙や、ふるさと三隅の景色、身近な小動物を作品として残していった、その息遣いやこだわりが非常にうまくまとめられていていて、気持ちのいい時間を過ごすことができた。身の回りのガラクタで動物や人物をかたどったオモチャの数々も、やさしさと遊びにみちていて、気持ちをホッとさせてくれる。地方の美術館で、これだけのキュレーションがなされている美術館は珍しい。
展示物の間に、「ここが私の空であり、大地だ。ここで死にたい。ここの土になりたいと思う。思い通りの家の、思い通りの仕事場でえ絵を描くことができる。それが“私の宇宙”である。」という香月泰男の言葉があった。美術館が発信していたふしぎな力のもとは、こうした香月の宇宙観と、その思いを受け止め伝えようとする関係者の努力によってもたらされているのだろう。
でも、ちょっと残念だったのは、香月がこななく愛したという三隅の風景が、近年の建設工事によって荒れてしまっていたこと。屋上展望所にあがるとそのことが一目りょう然であった。

http://www.city.nagato.yamaguchi.jp/~kazukiyasuo/