八女で伝統工芸産業の問題にふれる

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博多織のことをお手伝いしていることもあって、福岡県商業・地域政策課の木室さんからお誘いがあり、夕方からの「八女伝統工芸産業振興懇話会」に出かけた。八女市と八女商工会議所が事務局をつとめ、八女市ご出身の内野健一先生(九州大学名誉教授)を座長に2時間ちょっとの会であった。内野先生は、以前からいろんな場面でお世話になていることもあり、お互いに気心が知れ、好きなことを言わせていただいた。事務局のサポート役として、旧知の新貝耕市さん(ジーコム)が参加されているのもうれしい布陣だ。
八女のほうからは、仏壇、提灯、石灯ろう、手すき和紙の分野から計10名の方々が参加され、産地や事業の概要についてお話をお伺いした。伝統工芸産業が、一般論としては大変に状況にあるということは理解していたが、改めて個別に聞くと、社会および市場の変化、中国との競争、販路開拓、技術、担い手、原材料等の問題が複合化していて、想像以上の困難に直面しているようだ。しかし、まちをちょっと歩くだけでも、八女には伝統的なものづくりの文化や風土がまだ濃厚に残っていることが伝わってくる。課題は、「伝統」で培われてきた資産を、まったく異分野の要素との新結合も含め、新しい時代環境のなかでいかに編集しなおしていくかだ。
「仏壇業界」は、ヨガ、禅、ヒーリング、アロマ等のブームをとらえれば「スピリチュアル・インダストリー」としての可能性がありそうだし、和紙や提灯も「LOHAS」の潮流をうけてRE(再生/エコ)と癒しのシンボル・グッズとしての展開ができないものか・・・
いずれにしても、業界の枠組みをはずして、新しい発想とアイデアで勝負していきましょうよということをお話した。そのためには、あわせて、八女にどんな「巧の技」や「材の知恵」がストックされているか、「お宝」要素の棚卸しと分析をやりましょうよということも提案しておいた。
そうそう、いただいた観光協会作成のマップは、「八女には無いものもあるけれど、心を癒すものがある。だから、ほっとする街なのです」というコピーがのっている。「これだ!」と直感した。「心がほっとする」という視点で、伝統文化と巧の技を仕立て直していったら、八女からいろんな発信ができそうな気がする。「八女茶」(お茶の文化と禅の世界は表裏一体だ)とも連携して、「精神生活空間」をトータルに演出していくこともできそうだ。次回の工房視察が楽しみになってきた。