「現代仏壇」の自由さ

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昨日のことだ。ミーティングの合間に時間があいたので、アクロスと毎日新聞社の対面にある「現代仏壇ギャラリー メモリア」にふらりと入り、結果的に店長の末定さんと小一時間も話し込んでしまった(末定さんの誠実な対応をよいことに、とんだ長居をしてしまった)。その前を通り、以前から気になっていたショップである。デザイン性の高いモダンな仏壇についてはテレビで知っていたが、じっくり見るのは初めてだ。
驚いた。「感心した」といったほうがふさわしいかも知れない。デザインのモダンさというより、この“ギャラリー”を全国展開している(株)八木研という会社のイノベーティブな発想というか思想そのものについてである。
インテリアショップと見まごうばかりの明るいギャラリーに“展示”してある商品は、いずれも「仏壇」についての固定概念に揺さぶりをかけるものばかりだ。マンションのインテリア家具と兼用できそうな仏壇、戒名でなく本名を書いても構わないという位牌(もち歩けるペンダント位牌もある)、ワイングラスとしても使えそうなイタリア製のガラス器、故人の粉末化した骨の一部を「手元供養」として、いつも身近に綺麗な形でおいて置きたい・身につけておきたい人のための手のひらサイズの可愛い骨壺やペンダント・・・。末定さんに「これらの統一コンセプトって、何ですか」尋ねたところ、返ってきたのは「先祖供養壇」という聞く言葉であった。「本尊を祀る」という従来の仏壇の役割を問い直し、「先祖や個人を祀る」ことにあると定義し直した上で、それを起点に新しいデザインや商品の開発を行っているというのだ。仏壇に新しい意味付けを行い、お客さんに新しい物語を提案していく ─ 。八木研という会社は、心の領域において新しいライフスタイルの提案をし続ける、出色のイノベーターであることがすぐに理解され、「凄い!」とうなってしまった。
も一つ感心したことがる。いただいた冊子を見ると、柳田国男の「先祖の話」や、梅原猛の「日本人のあの世観」などを通し、日本人古来(仏教伝来以前から)の霊魂観、死生観をたどり、「仏壇を通した、愛する人へのコミュニケーション」というビジョンを明確に打ち出しているのだ。八木研という会社には、深層・基層の日本人の文化遺伝子をきちんとおさえ、それをデザインとしてすくい上げていこうという思想がある。いやはや、天神のど真ん中に、面白いお店ができたものだ。また、ウィンドウ・ショッピング(笑)にでかけよう。

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