地域の異能

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大雨洪水警報が出ているなか、芥屋地区公民館で芥屋地域づくり懇談会を開催した。講師は地元・芥屋のお住まいの柴田成人さん。演目は一応「花づくりと環境・健康づくり」となっていたが、縦横無尽、強烈な韓国の地野菜が出てくるわ、効き目が一嗅ぎでわかる自製の酵素原液が紹介されるわで、「芥屋にもこんなひとがいるのだ!」ととても愉快な、あっという間の2時間であった。
成人さん、メインの職業としては農業ということになろうが、一言で言えば、まさしく地域起業家。芥屋で最初に蘭の栽培を手がけ成功したものの、花バブルで「これは危ない」「普通の相場でも食える作物でないとヤバい」ということで、20年前に蘭からあっさり手を引き、次つぎに新しい作物を自ら探索し、商品化されてきたという。ベンチャーを起こされたこともあるとのことだ。最近では、最強のキノコとされるメシマコブをてがけ、うわさを聞きつけたお客が直接買いに来るようになったという。また、以前、芥屋にはごく普通にあったハマボウフラ(薬草)の栽培をこれから手がけたいとのこと。
「すべては見方をかえることから」「自分の目と足で探しまわる」「よそに行ったら素手では帰ってこない(商売のタネになりそうなものを必ず何かを持ち帰る)」「新しいものを見つけても、すぐに次を追い続ける」「二番煎じはしないほうがいい」「補助金をうまくとろうなんて意識はダメ」「これからの農業は共同経営」「市場に売りに行く作物でなく、お客が買いに来るものを作ろう」「庭先で高付加価値の作物を栽培し、物々交換をとりいれた田園住宅事業をやろう」、、、と成人さんの人生経験に裏打ちされた言葉がじつに歯切れがいいので、懇談会のまとめ役であることを忘れて、ついつい聞き入ってしまい、ともに準備をすすめてきたメンバーからは「もうそろそろまとめを!」とイエローカードを数枚頂戴してしまった(笑)。
後で知ったことだが、海外を含め地域の外で活発な活動をされているにもかかわらず、地元で成人さんの話を聞く会というのは初めてだったとのこと。時代をよむセンスに長ける異能であるがゆえに、地元では煙たがられるということか。成人さんの口からも、「大雨で田んぼが水につかり被害が出た時、隣の田んぼも被害が出たのをみて安心するのが百姓の習い性」「こうしたらと提案しても、芥屋の人間はなかなか乗ってこない」と、横並び指向の現状に対して手厳しい指摘があった。地域のなかで、地域を変えていく見識をもち、その役割を潜在的にもっている人間をどう活かしていくかによって地域の活力が大きく左右されるよに思う。「外での評価、内での無理解」というのでは、どこかの国のありようと同じある。地域の意識をいかにオープン化していくか、芥屋のみならず、たいていの地域が共通してかかえる課題だ。
いずれにせよ、柴田成人さんにはもっと面白い話を引きだし、いろいろ教えていただきたいと思う。「宝のたねは門外不出、成果は村民で山分け」といった、突端の里・芥屋ならではの「マル秘・知恵もん産業戦略」なんかを作れたら最高だ。