鉄道マン・石井幸孝さんが見てこられた日本社会


昨日、しすい会で元・JR九州会長の石井幸孝さんのお話を伺った。演題は「国鉄改革と最近の改革」となっていたが、なぜドイツや南米、中近東のサッカーは強いのかという庶民の疑問に対する仮説を提示された「地方分権と経済成長とスポーツ」や、理事長として現在活躍されているNPO法人 鴻臚館・福岡城跡歴史・観光・市民の会のパンフレット等もおもちいただいての卓話であった。
石井さんは、常務理事として国鉄改革にあたられ、民営化後はJR九州の社長・会長として、「東京に負けられない」との気概でJR九州の改革・再建に取り組まれた。JR時代は、福岡市の行政改革への提言をまとめられたこともあって、福岡市長選に自ら出る・出ないで会社や財界との間で軋轢が生じ、結果的には財界の第一線から身を引かれるかたちとなったが、最後まで言わば改革の矢面にたってこられた。
お話はというと、73歳とはとても思えない若さ ─ お顔・お声・お考え ─ にほとほと感心してしまった。懇親会の席では、しすい会のポスト還暦および同予備軍メンバーから、「まいったなぁ」というため息(笑)が相次いだ。じつは、市長選の件があって以来、久しぶりにお会いすることもあって、いろいろと複雑な境地をお持ちではと、勝手な憶測をもって参加したが、当方の見当違いも甚だしかった。
まさに、快刀乱麻のごとく、であった。とりわけ印象に残った点は、「改革は永遠の成人病対策であり、看板替えをする程度のことではダメ」、「ワールドカップ戦を見ていて、日本人の体力・気力が低下してることが気になった」(石井さんは、福岡県サッカー協会の会長でもある)、「道州制による地方改革は組織論・仕組み論をいくらいじくってもだめ。底辺からの実践の問題として取り組む必要あり」、「建前と本音を使い分ける時代ではなくなった。オリンピック誘致論議にしても新国際空港問題にしても、オープンに様々な角度から本音で議論しあうべきでないか」、「日本の直面する一番の問題は、いろなレベル(家庭、地域、会社、国家)のコミュニティーが壊れつつあること。韓国は“しつけ教育”をはじめ、家庭と学校がしっかりしている。韓国からもっと学ぶべきだ」、「団塊の世代以上が、しつけ・文化・スポーツ等で、日本ルネッサンスのイニシアチブをとるべきだ」といった指摘である。
これらの指摘は、それぞれ別個の問題のようでありながら、社会・組織・地域という人間集団のありようということでは一本の糸でつながっている。鉄道という近代社会のインフラ(骨格)というかシステムそのものの仕事に、技術者・経営者としてあたってこられた石井さんならではの見方に多くのことを学ばせていただいた。
最後は、「日韓トンネル計画をやっと真正面から議論できる時代になりました。2030年には海底トンネルで九州と韓国をつなぎたい」という話でしめくくられた。また、どこかでお会いする楽しみをとっておくことにしよう。


NPO法人 鴻臚館・福岡城跡歴史・観光・市民の会(福岡城市民の会)
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