ブログのもう一つの可能性

,

ブログベースのコミュニケーション・ツール開発を精力的に行っている(株)イーハイブをを訪問した。イーハイブは福岡における大学発ベンチャーの走りのような存在であり、創業者の平井良明さんとは同社の創業直後まもなく知りあった仲でもある。平井さんとは、これまでいろんな機会に会ったり、大学内で話をしてもらったりということはあったが、会社を訪問するのは初めてであった。
そのイーハイブは、東区千早のもと工場であった木造モルタルの建物の一角にあった。年季を感じさせる建物は、他のIT4社と共同利用である。思わず、赤塚不二夫トキワ荘を思い出してしまった。映画のロケとしても使えそうな雰囲気である。
訪問の目的は、最近の事業についてお尋ねし、産学連携で何か一緒にやれることはないかという相談をすることにあった。
イーハイブでの開発の実際を聞きながら、ブログのもつ可能性を再認識したことだった。
イーハイブは選挙情報専門サイト“Election”の開発・運営で有名となった企業であるが、専門性をもったサイト開発というコンセプトはそのまま引き継がれ、ブログで最初に手がけたのが政治家ブログ”ele-logエレログ)”で、有名でない政治家も情報発信ができて、有権者が政治家の発言を簡単にチェックできるようなサイトをつくったというのが平井さんらしい。大物も小物もまったく平等に扱い、コメントやトラックバックを通じて、自由に意見交換できる言論空間だ。そのミソは、政治家の発言(書き込み)を、一行のサマリーとして集約していくポータル機能にある。それぞれの政治家は、まるでコンビニの棚にならんだ商品のような感じである。
ブログの出現によって、政治家と市民の関係はもちろんであるが、行政と住民の関係も変えていくことができる、と平井さん。これまでの行政のホームページは、一方通行的であり、書き込みコーナーがあっても批判的な立場のクレイマーばかりという状況であったのが、ブログにすると賛成か反対かという対立の構図が解消され、オープンに情報を提供しあったり、フラットな議論を行ったりが可能な空間がウェブ上にできていくという。新しい共同性や公共性を生みだす道具としてのブログ。ナルホドと納得した。“オープン”と“ユーザー参加”をコアに進展著しい Web 2.0 の可能性は、マーケティング分野のみならず、行政やコミュニティー活動においても大いに開花していきそうだ。
ふむふむと平井さんの話に耳を傾けていったが、ただ気になることに営業等でのブログ・アプリケーションについての顧客反応ということでは、九州の反応は東京に比べると相当鈍いという。「やはり」というしかない。情報感度の格差が今後どんな影響を及ぼすことになるか気になるところだ。
900万人を超したとされるブログ人口の増大を受け、日本的なモノづくりの精神を発揮しながら、社会の潜在ニーズを丁寧かつ物静かに開拓していおられる平井さんの姿にふれ、何らかのパートナーシップを組めたらいいなと思いつつ、素敵な“ベンチャー長屋”を後にした。

(株)イーハイブ→ http://www.i-hive.co.jp/
政治家ブログele-loghttp://www.election.ne.jp/