「気づき展」で気づいたこと

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5日(水)から11日(火)まで九州大学ユーザーサイエンス機構の女性職員全員による企画「第1回 気づき展」が九大大橋サテライトで開かれている。どんな“気づき”が展示されているか楽しみで、7日の会議の合間を見てサテライトに出かけた。
1枚のパネルに1〜2件ずつわかりやすく表現たものが、全体で80件近くあろうか。これでもか、これでもかという感じで、“気づきと、その背後の“イライラ”や“ぼやき”が一同に会するかたちで展示されると、なかなか壮観である。「そうだよな」「そうそう」「そうか!」とつぶやきながら3回も回ってしまった。
そのなかでも“私のお気に入り”として強く共感できたのは、「自動販売機の取出口って取り出しにくよね」とか「ビルトイレの洗面台の周辺に鞄を吊り下げるフックを」「乾電池の消耗状態が一目でわかれば便利」というあたり。下着などはベランダでは乾かしにくいという女性ならではの「目隠しネット」の考案も、当方の必要性はないながらもいたく感心してしまった。
参加した女性は、そのほとんどが事務や研究補助に従事するスタッフであり、マーケティングや研究という点ではいずれもシロウトである。しかし、彼女らこそは、生活のプロであり、日常生活でたくさんの問題や不満に直面しているのだ。その声や視点を生かすことこそがこれからの研究にとって重要な契機となることを改めて痛感した。生活者視点で物事を考えていこうとする時、あらゆるヒントやアイデアは生活の現場にある。そうした視点を研究者がいかに身につけ、新しい学問のあり方としてどうしたら展開していけるか ─ 。今回の取り組みに、大学改革のヒントが隠されているように思う。
いろんなところで「気づき展」を行い、「気づきに気づく」という変化の波紋を拡げていけば、企業や行政がウカウカできない状況を社会的に創りだしていけるに違いない。その先行事例がグログだ。最初は“良識ある”大人たちが単なる「日記」と高をくくっていたブログのユーザーが、あっと言う間(2年たらず)に日本だけでも900万人を数える状況が生まれるなかで、商品開発や市場競争をめぐる力学が、シロウトのブロガー集団の存在によって大きく変わろうとしている。こうした中で、プロを自称するマーケッターたちは今日、ブログ内の断片的情報の収集・分析に躍起となっている有り様だ。
既存商品に満足せず、自分の求めるものを自ら提案し、場合によっては自分で作ろうとする、クリエイティブ志向の消費者(プロシューマー)が、これからどんどん増えていきそうな予感がする。これまでは、一握りの大手メーカーや権力者が世の中の仕組みを動かしてきたけれども、これからは「みんなの意見」や「みんなの知恵」、いたるところからの多様な「気づき」の噴出が社会のありようを変えていくことになるのでないか。
で、問題はそうしたうねりに男どもが参加できる余地があるかどうかだ。こうなったら、女性パワーを横目にみながら「男のグチ展」とか「お父さんのオアシス展」とかやるしかないか(笑)。

九州大学ユーザーサイエンス機構→ http://www.usi.kyushu-u.ac.jp

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