恐るべし「さぬき」の麺力

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何を隠そう(隠しているわけでなく、こんなどうでもいいことは誰も知らないだけのことであるが ─ 笑)、私は「アジア麺文化研究会」の会員であり、季刊『麺の世界』の編集顧問の一人でもある。この世界、歴戦の強者がワンサカとおられるなかで、こちらはというと最近、フィールドワークを怠り、迫力がないこと甚だしい。何とか初志に立ち返らねばと、自戒の念にとらわれていたところ、今の福岡麺界を席捲しているという「さぬきうどん大使 福岡麺通団」の話を複数の麺フリークから聞き、「気づき展」の後は、薬院西鉄大牟田線ガード下の「うどん店」の取材を決め込んだ。
麺通団に向かうと、福岡ではまだ珍しい行列の洗礼を受けることとに。福岡というか博多では、どうも「並ぶ」という文化がない(「昼めしぐらい、並んでまで喰わんでよかろうもん!」)ためか、こうした光景に出くわすと、やはり一瞬ひるんでしまう。でも、ここは初志貫徹、並ぶことにし、10分ほど待っただけで、めでたく客人となることができた。外から店内を見てると、このあたりの客さばきとテキパキとしたオペレーションはたいしたものだ。
注文のほうは、2人で来てたら冷(しょうゆかけ)と暖(あつかけ)の両方を楽したのにとの思いを抱きつつ、初回は基本の“しょうゆ 大”(390円)と“ちくわ天”(100円)と“やさい天”(100円)を注文。しめて590円なり。
味はというと、さすが麺は讃岐直送(店ではカットし茹でるのみらしい)ということもあって、本場の独特のコシと食感が大いに楽しめた。加えるのは醤油と薬味(大根おろし、ネギ、ショウガ)のみというシンプルさ。それを喜悦満面でかき混ぜ、口に運び、ずるずるノドに通すという一連動作ともに、官能に染み込んでくる味・香・触の素晴らしいこと! まさに、「麺の快楽」である。“ちくわ天”“やさい天”との取り合わせもいい。恐るべし「さぬき」である。麺の本場 博多に乗り込むとは、相当な自身と計算があってのことだろう。「博多」もうかうかとしていられない。やれ、ラーメン発祥の地、うどん伝来の地との神話のみに寄り掛かっていては、それがどうしたというイノベーターから足下を掘り崩されかねないのではないか。
また、ビジネスモデル的にも、讃岐ではごく普通の「製麺所型職人&セルフ」というスタイルが福岡で定着するかどうかが見物だ。個人的には結構いけそうな気がする。気の短い福岡の人間をあまり待たせず、おいしいうどんを庶民価格で提供できるとなれば、新たな「麺人口」を開拓できそうに思う。
いずれにせよ、福岡麺通団には現地調査で、足しげく通う必要がありそうだ。実はこの9月9日(土)には太宰府市日本うどん学会が開催され、私もパネリストの一人として参加予定である。テーマは、うどん学会にしては「麺文化の統合と融合」とやや固めだが、それにつながりそうなネタを足と胃袋で稼ぐことにしよう。この夏のテーマは、「博多うどん夏の陣」に決めた(笑)。

麺の世界→ http://www.sunglow.info/soukan.html
福岡麺通団http://www.mentsu-dan.com/index.html#profile

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