「際」に立つ熱帯雨林人・茂木健一郎さんと飲む

 *茂木さんがシンポの途中で描いたという絵
昨日、ユーザーサイエンス機構のプロジェクトについての相談ということで、夕刻より大名の「暖招家 安寧」奥の間で、計6人で脳科学者の茂木健一郎さんを取り囲んだ。前回、6月に集まり、飲んだばかりだが、実によく付き合っていただき、感謝感謝である。そして今回は九州初上陸の静岡県島田市在住の歴史研究家、河村隆夫さんもお連れいただいた。
当初、1時間ほどはビールぬきで打合せをと思ったが、午前中の新幹線での原稿書き2本と、昼過ぎから日本認知運動療法学会シンポジウムの仕事を一つこなされたという茂木さん、さぞかしノドが乾いておられるのであろう、「僕は、ビールを飲んでも IQ は変わりませんから」との一言で、ビア・ミーティングに変更。
途中から、茂木ファンであるデザイナーの平松暁夫妻が参入され、茂木さんの呼び出し電話で目黒実さんも到着、座敷にこれ以上はもう入りきれないという状況になったところで、上記シンポジウムの関係者までもが3人乱入、、、ということで最後は2箇所での同時進行宴会となった。
脳のコミュニケーションと創造性について語り、子どもの遊びについて語り、Web2.0 時代のユーザー像について語り、吉本隆明について語り、女性について語り、恋愛について語り、、、と茂木パワー&ジョークが炸裂しっぱなしであった。「紙一枚はさみこむすき間もない」と本人が語るほどの超過密スケジュールのなかでの、突き抜けたようなこの飲みっぷり・語りっぷりはスゴイ。また、「母の故郷が小倉でもあるし、九州との縁は大事にしたい」という人情談義と参加者一人一人への気配りで、一同はいやがうえにも茂木マジックにかかってしまい、座のエネルギー密度は高まるばかりだ。
それにしても、茂木さんのクリエイティブ・パワーの水準と持続はどこから生まれのだろう。また、彼の「脳」はどのように鍛えられ養生されているのか。脳科学の大いなるテーマだ(笑)。
じつは、この2月に出た『書きたがる脳 ─ 言語と創造性の科学』(アリス・W・フラハティ)に茂木さんが寄せている解説に最近、次のようなくだりがあるのを発見した。昨日は、その解説が単なる解説にとどまらず茂木さんの生き方そのものにもなっていることを目の当たりにして、スゴイ!と重ねてうなってしまった。

情報洪水の中で、細切れの時間を生きる現代人は、忙しさを仕事の質が低下することの言い訳にするのではなく、(35歳の生涯で膨大な数の曲を残した)モーツァルトをこそ理想とすべきでないか。・・・創造の才能とは「過剰」のことである。・・最高度に創造的な状態は、脳の病態と紙一重でもある。・・・才能は決して序列ではなく、熱帯雨林生態学的多様性に通じる多彩さこそが、人間の可能性の本質である。

紙一枚はさみこむすき間もない状況のなかで、一歩間違えれば神経学の対象ともなりかねないようなギリギリの「際」に立っても、脳のさらなる可能性をとことん突き詰めようとする茂木さんは、本当に素敵な熱帯雨林人である。


茂木健一郎 クオリア日記 → http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/