すすむ「イオン志摩」の工事

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イオン九州志摩町津和崎に建設する「イオンスーパーセンター志摩店」の起工式が7月19日に行われ、現在、11月オープンに向けて着々と工事が進んでいる。建設地は役場から歩いて1〜2分のところにある。基盤整備事業が導入された農業振興農地として、通常は開発行為が禁止されている地区であるが、農業委員会で農振地区指定の解除がなされ、農政局の許可を受けて着工に至ったものだ。
糸島新聞によると、敷地面積は約85,000平方メートル、平屋建ての店舗約25,000平方メートル、自動車1,550台、自転車約240台の駐車スペースが設けられる。直営売り場のほかに、テナント店舗が40ほど入る予定で、衣料品や食料品、生活関連用品等をそろえるスーパーとホームセンターの機能を併せ持つ「スーパーセンター」という業態が展開されるという。また、現在は役場と同じ敷地内にある物産直売所「志摩の四季」がイオン敷地内の別棟に移転し、ころを機に糸島農協と志摩町観光協会が協力した店舗、JF糸島「志摩の四季」として新規オープンする予定であるという。
じつは、イオン進出について、私には第三者として評論家を決め込むわけにはいかない事情がある。役場および周辺地区の拠点性を高める方向で計画誘導を行う必要があるとした「志摩町都市マスタープラン」の策定に、7〜8年前携わった経緯があるからだ。もちろん、その当時は、拠点性の具体的中味にまで立ち入った検討を行ったわけではなく、志摩町の中心部の魅力づくりが必要だとの認識を、拠点性という言葉で明示しておくというものだった。
Aコープの店舗と「志摩の四季」があるくらいの初・津和崎地区に、拠点性を高める商業・集客施設の立地をというのは、町の長年の“悲願”でもあった。しかし、この間の流通をめぐる環境は、消費ニーズの変化を受け、郊外型から中心市街地型へ、機能・価格指向型からコミュニティー・交流指向型へと、展開方向が大きく変わりつつある。そうした意味で、イオン志摩は商業移行期にあって微妙な立ち位置にある。郊外型店舗で域内外からの購買力吸引を図るとともに、地域のコミュニティー中心として、どれだけ地元住民の支持ならびに愛着をつかんでいけるか ─。イオンにはぜひとも、郊外型業態の画一的な展開にとどまらず、地元との関係のなかで「志摩方式」と言えるような、地域密着型の新しい商業のあり方を模索して欲しい。
郊外型の大型ショッピングセンター、ファミレス、コンビニ、パチンコ等が消費を吸引する「ファスト風土」的な社会の行き過ぎた展開は、地域コミュニティーや、教育、文化にいたるまで、じわりじわりと社会の「幹」にあたる部分に、いわば精神の空洞化とでも言えるような影響を及ぼしつつあるように思う。これからの商業が回帰していくべきは、単にモノとおカネの交換や利便性提供にとどまらない、店先での人間的ふれあいや、子どもたちの原体験、若い親たちの子育て支援、地域文化の継承等を大切にした、「暮らしとこころの拠点づくり」であると思う。
イオン志摩の工事現場は私の通勤ルート上にある。可也幼稚園の真横でクレーンやハンマー、ダンプが忙しく動き回る様をみながら、幼稚園の子どもたちへのオープン後の影響や、交通混雑によるトラブル等、アレコレ気にしながら、工事現場の横を走る日々である。