若者のパワーと情熱が地域に響く

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“科学を通じた「九州大学」と「糸島地域」の出会いの場・ネットワークづくり”を標榜する「いとしまサイエンスキャラバン」の第2回イベントがあるというので出かけた。ユーザーサイエンス機構も、学術研究員の清水さんが企画にタッチしているイベントである。会場となったのは志摩町役場の会議室。志摩町二丈町前原市を巡回して開催することから“キャラバン”という名称になったそうだ。
今回、志摩町でのテーマは「農を活かす科学とは?」ということで、高原農業実験実習場(九大付属牧場)の助教授・後藤貴文さんと、農業経済学を専門とする助手の佐藤剛史さん。コーディネーターは知的財産本部/産学連携センターの助手・中武貞文さん。テーマについては中武さんが志摩町と協議をして決め、それにふさわしい研究者を選出していったとのこと。後藤さんが「農を活かす ─日本型フードチェーンへの新たな挑戦 ─」と題して耕作放棄地を活用した安心・安全の和牛飼育について語り、佐藤さんが「生きものを育む ─なぜ農業が大切か」と題して地産地販型の農業やドイツの環境保全型農業について語った。
地元での開催でもあるので、知人にも情報回覧をしていたが、どの位集まるものか不安な気持ちで会場に向かった。しかし、何と参加者は最終的には130名近い数となった。農業関係、行政関係の他に、地域づくりに携わる多様な方々が参加され、その中には知った顔もずいぶん多かった。
みんなの気持ちを元気にさせ、出会いを生み出す、じつに素晴らしいイベントであった。講演や議論の内容もさることながら、企画サイド、プレイヤーサイドの双方に若々しいセンスと情熱、そして遊び感覚がほとばしっており、それが参加者に伝わり・共有される形で、いい感じの場を生みだしていた。
例えば、参加者に配られた質問シートには、「○○に言葉を入れてみてください。面白い質問になるハズ」ということで、次のような項目が並んでいた。
 1.糸島の耕作放棄地は○○に使えるハズだ!
 2.私は糸島の○○が凄く気になります
 3.あなたが考える「九大」のイメージを教えてください
 4.二人の研究者に向けて「あなたの○○を教えて下さい!」
結果として、なかなかユニークな質問が多数引き出され(そういえば、3.については反応がなかった ─笑)、中武さんの巧みな司会進行もあって、会場の一体感が高まっていった。ワークショップ的な演出や小道具の活用を含め、これまでの形式ばった講演会にない伸びやかさが非常に印象的であった。講師役を務めた後藤さん・佐藤さんがまたよかった。いずれも若手で実践的な熱血農学者である。
これからは、権威のある教授の話をありがたく拝聴する場というよりも、今日のような形で地元の人びとが若い研究者の情熱とエネルギーにふれる機会をつくっていくことで、地域と大学との新しい関係を生み出していくことが必要だと痛感した。
第2部の懇親会にもほとんどの人が残り、地元の料理研究家の手作り料理を囲んで、10時近くまで賑やかな交流が繰り広げられた。
次回は、二丈町での開催とのことで、どんな内容となるか今から楽しみだ。