実践のなかで磨かれた言葉


あじびホールで開かれた「アクセスアーツフォーラム福岡」に出かけた。このフォーラムは、旧知である(財)たんぽぽの家の播磨靖夫さんがコーディネートされ、全国4箇所で開催されるものだ(その皮切りが福岡)。「障害のある人の芸術文化活動を通した社会参加」をメインテーマに、アートの可能性を様々に探っていこうというもの。
パネリストには、運営委員として、ほんの微力のお手伝いをしている福祉作業所・工房まるの樋口龍二君やメンバーの柳田烈信君(TAKE やん)が出ていることもあり、応援団として参加した。フォーラムでは、これから先、アート(芸術)をとおした関係性の見直しや、コミュニケーションの活性化が、いろんな領域で共通の関心事になってくるはずだ、そのことを認識してアートはもっと社会に向き合うべきだ、、、といった議論がなされた。
フォーラムの詳細はとりあえずおいておいて(もちろん、素晴らしい内容であった)、フォーラムにおいて龍ちゃんが紹介してくれた「言葉の整理」をぜひ紹介しておきたい。工房まるが、アートを軸として福祉の領域において様々な実践を行ってきたなかで辿りついた、一つの水準がそこに表現されていると思うからだ。それは、次のような簡潔な言葉から成っていた。

「障害」とは・・・
 「障害」=あいだにあるもの
   人や社会とコミュニケーションを行う際、困難にさせる感情や、物質的要素
「福祉」とは・・・
 「福祉」=幸せ
   人として誰もが追い求める本質的な「豊かさ」を創造すること
「自立」とは・・・
 「自立」=その人らしさ
   自分の力だけでなく、さまざまな関係から「その人らしさ」が現れること
「仕事」とは・・・
 「その人らしさ」=幸せ
   社会との関わりや、自分の役割が実感できること
「アート」とは・・・
 「アート」=心の循環を促す活動
「コミュニティー」とは・・・
 「コミュニティー」=創造を共有した共同体
   創造した「おもい」を地域社会へ還元していく共同体

工房まるのこれまでの実践活動の到達点が、無駄なくピシッと表現されていて、「凄い」とうなってしまった。「仕事」の定義は、先日の西村佳哲さんのレクチャーと重なり、アートを「心の循環」という観点から捉える視点もいい。実践のなかで磨かれた言葉は、実感がこもっていて、とても大きな力をもつことを改めて教えてもらった。

*工房まる → http://www.maru-web.jp/
*たんぽぽの家 → http://popo.or.jp/


【アクセスアーツフォーラムのねらい】 *フォーラム案内から
今、障害のある人たちをめぐる社会状況は大きく変化しています。このようななか、障害のある人の生活の質を高めたり、社会参加の機会となるアート活動が全国において広がってきています。
これらの活動は、障害のある人たちの生きることを豊かにするだけでなく、周辺にいる人たちとの関係性を豊かにしたり、コミュニティに変化をもたらし、社会とアート、人とアート、人と人との新しい関係を示唆しています。
このフォーラムでは、障害のある人を含め、誰もがアートを通して人とかかわり、社会に参加していくことの意義や方法について考えます。そして、人間として豊かに生きていくための文化権や、アートによって生まれる新しいコミュニティ、新しい公共のあり方を提案していくことをめざします。