野生パワーにしてやられ


朝の散歩は、よほどのことがない限り、カミさんとの共同日課として定着した。朝起きると散歩に出かけるということを覚えてしまったカキとクリの、そのはしゃぎようといったら尋常ではない。こちらを見つけると、二匹でジャンプしながら飛びかかり、準備体操よろしく、庭をぐるぐると走り回る。行かない言い訳を繰り出すことができなくなってしまうのだ。分別や道理と無縁の「野生」のエネルギーには脱帽である。
そしていつの間にか、夜明け前後の散歩は義務から愉しみに変わっていた。ことさらに言うのも気恥ずかしいが、星の光を背に受け、波の音を聴きながらの一時が、日々の夾雑物や雑念を吸い取ってくれる感じで、ボクらにとってとても貴重なものとなっている。カキとクリのお陰である。
もう一つのお陰として、散歩の道行きで、野の花はもちろんであるが、時として野の菜(野菜!)に出くわし、朝餉に彩りを添えてくれる、というか貴重な食材となる。きょうは、道端の野生の大根を一本頂戴した。捨てられた大根か飛んできた種から発芽して野生化したものだろう。2週間前にもぐいっと引き抜き、持ち帰ったことがある、なじみの場所の大根だ。この大根、おろしにして醤油と小煮干し、唐芥子をまぜ、温かいご飯にぶっかけて、かき混ぜつつ食する。あとはなにもいらない。舌先から頭のてっぺんからツーンとくる、昔なつかしのあの痛いほどの刺激がたまらない。これをどんぶり半分ほどとると、終日、胃腸が快適この上なく、ハラの減り具合が普通でないことが手(腹─笑)にとるようにわかる。天然ジアスターゼのなせるわざであろう。ここでも「野生」のパワーに脱帽だ。アリガタヤ、アリガタヤ。