里遊びの心地よさ


芥屋の隣の行政区である引津で「里のみち祭り」があり参加した。「引津の里を歩いて・眺めて・味わって」というコンセプトで、県道バイパスの計画地にテントが建ち並び、「里めぐりウォークラリー」「食べつくし売りつくし出店」「親子で楽しい凧づくり」「花咲かプロジェクト」「道路計画体験コーナー」といったイベントが行われた。芥屋地区地域づくりのメンバーである久保秀明さんが、祭りの準備段階のワークショップから一町民として参加されているというので、久保さんのお誘いもあり、地域づくりの海岸清掃部隊でも「まんじゅうとお茶の店」を出すことになったという次第だ。
ただ、当方はまったくの役立たずであった(笑)。ならばということで、店から抜け出し、「里めぐりウォークラリー」に参加して、2時間近い里歩きを楽しませていただいた。約三千本あるという小富士の梅林をゆっくりめぐりながら、里山の自然と歴史を堪能し、そこに暮らす人びとの生活にふれるという、スローツアーである。途中で、2つの寺、1つの神社を訪れ、ご住職や神主さんの説明も聞くことができた。里山の小道を歩きながら、ところどころで眺望する加布里湾の素晴らしさは格別であった。こうした「里遊び」はまさに「歩いて・眺めて・味わって」の世界である。それぞれの地域の魅力を再発見・再認識し、よその人にを知ってもらういい機会だ。
今回のイベントは、福岡県前原土木事務所の主催である。土木事務所のイベントとしては出色であろう。祭りは、お店の出店やガイド役として様々に参画された地元組織の協力や、役場にお勤めの久保さん、地元に入ってワークショップ等の運営をされてきたコンサルタントの十時裕さん((株)アーバンデザインコンサルタント)等の熱意があってはじめて実現したものだ。十時さんは、志摩町のいくつかの集落に入り、地区計画づくりに向けた住民への働きかけなど、なかばボランタリーな活動をされている。今回のイベントは、行政的に上から下ろしていくような従来型のやり方ではなく、じっくり地域に入り、地域内部の力学がおぼろげにもつかめるようになったからこそ実現されたとおしゃったのが印象に残っている。
道づくり・港づくりといった土木系・公共事業系の世界も、ソフトと手入れ(メンテナンス)を重視すべき時代となった。しかし、それを行政の力だけで実現するのは難しい。地元の人間や団体に加え、いろんな関係者をつなぐNPO的な「つなぎ役」が不可欠である。今回の祭りにも、地元地域づくりの会や漁協、授産施設等の出店に加え、野鳥の会の方々や、梅林の再生・維持のために福岡からボランティアで通われている方もツアー・ガイド役として参加された。
「里」のレベルから地域を問い直し、地域の毛細血管に新しい発想を注ぎ込み、新鮮な活力を巻き起こしていく。「里の手入れ」である。引津で取り組まれたような営みが随所に広がり、相互に触発しあっていく様を志摩の未来図として描けないものか。
次は、芥屋の番だ。「里めぐり芥屋ウォーク」なり「芥屋の里遊び」に向けたワークショップは、とても楽しそうだ。