駅が面白くなってきた


出張先の東京で、飛行機までの時間がしばらくあいたということで、品川駅の探索をした。品川駅には、改札を入った駅の構内に商業施設を展開している、いわゆる「駅ナカ」で話題の「エキュート品川」がある。2005年10月のオープンだ。
ところで、東京では3月18日からSuicaカード一枚がJRのみならず私鉄・モノレール・地下鉄・バスで使えるようになったこともあって、駅における乗換えが随分とスムーズでラクになった。いちいち切符を買ったり、改札機に入れたりという手間が省けるというのはじつに気分がいい。相変わらず、JR・地下鉄・西鉄・バスのカード共通化が進まない福岡市とは大違いである。ユーザーの要望が強くあって、技術的にも可能なのに、組織の壁でできないというのは情けない限りだ。東京でできて福岡でできないという言い訳はできないはずだ。ぜひ福岡でも実現してほしい。
それはさておき、駅ナカエキュート品川」は想像以上のレベルだった。食事処、カフェ、総菜、お土産品、スウィーツ、デザイングッズ、文房具・雑貨、書籍、花屋と50店舗ちかくが揃っていて、各店のレベルもかなり高い。駅のコンコースからうまく区画された売り場に一旦入ると、駅の構内であることを忘れるような時間が流れている。40〜50分いて、ボクも洒落た歯ブラシ立てとこだわり文具(ミニ消しゴム・ミニボールペン)をつい買ってしまった。
鉄道事業と商業が一体化した駅ナカという業態が脚光を集めているのにはいろんな理由をあげることができそうだ。今回思ったのは、かつて通勤地獄という言葉すらあった東京において、移動はこれまで目的地に到達するのに必要なコストとしての物理的時間や生理的消耗でしかなかった。それが最近になって、移動の合間の時間と空間を楽しむという新しいライフスタイルや消費行動が提案され、ユーザーに受け入れられたということであろう。ちょっとした時間に、たんなる便利(コンビニエンス)を超えた高品質の商品やサービスに触れる機会が増えることで、日々の生活にちょっとだけ潤いが増す ─。例えば、今回回遊したショップのなかには、内外のいろんな種類のジャムを小瓶で取りそろえた素敵な店があったりした。
消費生活を支えるものとして、駅ナカと連続したコンコースにATMコーナーや、郵便ポスト、「さわれる案内板」があるというのも、きめ細かい配慮としてうれしいサービスだ。これまでなかったことが不思議だ。
いずれにせよ、これからの時代、「駅」が面白い存在になってくると思う。「移動」や「交通」という人間の根源的欲求につながる活動を受け止める時間と空間がそこに展開しているからだ。これからは、移動にともなう時間を物理的時間としてしか処理してこなかった反省にたって、心理的時間をもっと豊かにしていく知恵を交通関係者はもっとひねっていいと思う。さらに、交通は人の交流をもたらす契機としてもっと見直されていい。駅というと、特定の目的地に向かうための経過点という合理的志向がどうしても前面に出がちだけれど、「たまたま」いろんな人やコトに出会ったりということが起こりうる空間、ファンタジーを喚起できる存在でもあると思う。
九州新幹線の全線開業とあわせて「博多駅」の全面リニューアルの計画が進んでいる。しかし、そのあるべき姿については、いま一つ市民的な議論の盛り上がりに欠けている。「駅ナカ」を凌ぐ、新しい「駅」のありようを博多から発信しけないものだろうか。


駅ナカhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A7%85%E3%83%8A%E3%82%AB
エキュート品川→ http://www.ecute.co.jp/shinagawa/index.html