承天寺の怒り(4)音二郎も泣いている

19日付けの西日本新聞夕刊に「承天寺とマンション計画」の記事が載った。「承天寺隣接地ならば、マンションの高さは20メートルが目安。それを超す新築の届け出があれば、強く指導する」と説明するという都市景観室のコメントがポイントだ。是非とも、強力な指導力を発揮してほしい。

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2007/05/19, 西日本新聞夕刊
古刹「承天寺」隣にマンション計画 「景観損なう」地元波紋
墓所に眠る音二郎も心配!? 歴史の町 乱開発危機 福岡市博多区


 鎌倉時代に創建された福岡市博多区博多駅前の禅宗の古刹(こさつ)「承天寺(じょうてんじ)」の隣接地に、マンションの建設計画が浮上し、地元が「歴史的景観が壊される」と危機感を募らせている。同寺は、うどんやそばの伝来、博多祇園山笠の発祥の地として知られ、墓所には「列車の見える地に葬ってほしい」と遺言した明治期の俳優川上音二郎が眠る。住民らは「マンションが建てば、景観が損なわれ視界も狭まる。音二郎も泣いている」と、反対運動を展開する構えだ。
 マンションは、東宝住宅(北九州市小倉北区)が承天寺北側にある社有の駐車場に建設を予定する。百八戸の賃貸住宅が入居し、高さは約43メートルになるという。
 住民らは17日、博多祇園山笠振興会や川上音二郎世話人会などの代表が名を連ねた「願い書」を携え、承天寺のすぐ近くにある東宝住宅福岡支店を訪問。計画見直しを申し入れた。福岡市にも対応策を講じるよう求める予定で、建設反対の署名活動も計画中だ。同支店の担当者は住民の求めに、マンション建設の方針を重ねて表明。取材に対し、「(景観への配慮については)市と協議したい」と述べた。
 承天寺のある御供所地区は、日本最初の禅寺・聖福寺空海に由来する東長寺など歴史的な寺社が連なり、戦災を逃れた町家も残る。福岡市は1999年1月、同地区を市条例に基づく「都市景観形成地区」に指定。建物を新設・変更する場合、高さや屋根瓦の色などについて、市への届け出を義務づけた。
 承天寺周辺の建築物はガイドラインで「寺社境内の建築物や樹木の高さを考慮するなど寺社境内からの眺望に十分配慮した高さとする」と規定。同市都市景観室は「承天寺隣接地ならば、マンションの高さは20メートルが目安。それを超す新築の届け出があれば、強く指導する」と説明する。ただ、違反した場合の罰則はなく、強制力は乏しい。
 2011年の九州新幹線全線開通と新博多駅ビル開業を控え、承天寺周辺は地価上昇が際立つ。住民は「今回、マンション建設を認めれば、乱開発に歯止めがかからなくなる」と懸念する。
 世情を風刺する「オッペケペー節」で人気を博した博多出身の音二郎を顕彰する「音二郎忌世話人会」会長を務める漫画家長谷川法世さんは「開発を手掛ける業者は、地元の文化や歴史に配慮してほしい。音二郎も悲しむだろう」と話している。