「承天寺の怒り(8)」裏に建築基準法改正があった

神保至雲住職との電話で、マンションの設計会社として先日の説明会で説明をしていたO社が建築確認申請行為における「設計者」の立場を降りたようだということを聞いた。6月20日に施行が迫っている改正建築基準法の施工前に確認申請を提出することが間に合わないのでというのがその理由とのことだ。
始めはピンとこなかったが、調べてみると耐震強度偽装「姉歯問題」を背景とした今回の法改正で、構造計算書を複数の機関で二重チェックする仕組みを取り入れたことで、審査期間が従来の最長21日から35日に延びることがわかった。友人の建築家に尋ねると、現在、今回の法改正によってマンションメーカーをはじめ建築業界はパニック状態に陥っているそうだ。20日までに確認申請を提出しないと格段に厳しくなる審査によって大幅なコスト増になるため、法改正前の駆け込み申請が急増しているという。また、申請書を出すだけでなく、20日までに着工しないと、新法の基準達成が求められるというから、確かに業界にとっては「すわ大変!」の事態であろう。日経BPの建築関連サイトをみると、「【法改正】建築業協会、確認・検査制度案の緩和を国交省に要望」(2007/04/16)という記事もあったりする。
門外の徒ゆえ、改正建築基準法のことなど全く念頭になかったが、建築基準法改正を基点として住宅会社の一連の動きを振り返ると、今回のドタバタ劇の本質が透けて見えるように思う。
ところで、「新景観政策」を9月1日から実施予定の京都市の状況について京都新聞は、今回施工される改正建築基準法と、京都市が9月1日実施を予定している建築物の高さ(市街地の3割のエリアで高さ規制を強化)やデザイン規制を強化する「新景観政策」との相乗効果で、20日以降は建築基準法と条例上の手続きだけで、最短でも約2カ月必要になるという見通しを紹介している。
福岡市にとっても、これからの歴史・文化をいかした町並み整備、「ずっと住みたい街、残していきたい街」づくりにあたり、「景観」と「耐震」という2つの政策軸の連携が求められる。福岡市内各地で勃発している高層マンション建設問題は、それがもはや市場原理や民事解決のみに委ねることのできないまでに膨らんできていることを示しているのではないか。ここは吉田宏市長を先頭とした市行政の出番である。

京都新聞(2007.6.7)記事「中高層建築、現行基準で着工困難に、京都市新景観エリア、改正建基法で」
  → http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007060700177&genre=A2&area=K10