承天寺の怒り(12)「地域に貢献する形」に向け計画見直しへ

承天寺の庭は庭師・北山安夫さんの作品

承天寺の件、その後どうなってるの? とご心配の向きもありそうだ。「夏休みの絵日記」風ブログで、ちょっと振り返ってみよう(笑)。
じつは、高層マンション建設計画の事業主体である東宝住宅は、27日、福岡市に対し、「現計画にこだわることなく、地域に貢献する形で計画を見直す」と計画を見直す方針を文書で伝えてきた(下記新聞記事)。また、人数をしぼりこむ形で、住民と協議の場を設けたいとの意向も伝えてきているとのことで、会社側が歩み寄りを示し、事態がいい方向に展開していききそうな気配である。ただ、山笠期間中(7月1日〜15日)は関係者がそちらに手をとられるので、協議は山笠が終わってからということになったそうだ。このあたりは博多らしいところだ(笑)。
会社側からの回答のポイントは、「地域に貢献する形」という部分である。当初の収益性重視のマンション計画から景観との調和や、まちづくりの一翼を担う公共性の側面を押し出した計画への大胆な変更もあっていい。例えば、行政と連携し駐車場をいかす形で、1階部分に博多文化館をつくり、町歩きの案内所の機能と、博多織・博多人形・うどん・そば・菓子などの展示・販売・研修などの機能をもった会館を民設公営型(建物の床を市もしくは第三セクターで借り上げ、公共的な利用に供する)でつくってはどうか。公共セクターが入ることで建物の市場価値を引き上げることも可能だ。産官民共同の「新しい公共の形」である。それが実現すれば、会社にとっても博多で長期的にビジネスを展開していく上での布石ともなり、「粋な話」として企業イメージ形成に大きな力を発揮するのではないだろうか。
いずれにせよ、規制する側とされる側という硬直的な関係ではなく、それぞれの立場のちがいを超え、まちづくりの共同関係者として集い、話合いのなかで問題を解決し地域発展の可能性をさぐっていくというのが、博多らしい町人自治のありかたであると思う。今回のような問題が生じると、ややもすれば「景観条例改正によるコントロール強化」ということで、「官」の側にいっそうの権限を委ねる方向に流されがちである。しかし、「博多・千年の都」の維持・創成という長期スパンの課題の前には、町民自治による「見えない法」「地元ルール」をしっかりつくりあげていくことのほうが、これまでの博多の歴史や伝統にかなうものであると思う。


承天寺隣接地のマンション計画 住宅会社が見直しへ(西日本新聞 2007/06/28)

鎌倉時代に創建された福岡市博多区承天寺(じょうてんじ)の隣接地に高層マンション建設が計画されている問題で、事業主体の東宝住宅(北九州市)は27日、福岡市に計画を見直す方針を伝えた。景観への影響を危ぐしている地域住民に配慮し、「市の都市景観条例を順守しながら計画を作る」と表明した。
福岡市は1999年、古い寺社が残る承天寺周辺を都市景観条例に基づき、新築建物の高さなどを規制する都市景観形成地区に指定した。承天寺隣接地は20メートルが限度だが、今回のマンションは高さ約43メートル(15階建て)で、住民が「歴史的な景観が壊される」と反対している。
市と同社によると、同社福岡支店の幹部は27日、「現計画にこだわることなく、地域に貢献する形で計画を見直す」と市都市景観室に報告した。住民と近く協議の場を設ける。市は「人選や日程を中立の立場で調整する」と話した。
 承天寺はJR博多駅から北西へ約500メートル。同社は北側にある社有駐車場にマンションを建設する予定。市はこれまで、都市景観条例を踏まえて同社に計画変更を指導したが、強制力がないため、地元住民が危機感を強めていた。