大成功! 学生による「博多駅未来デザイン」プロジェクト

ユーザーの視点にたって、生活やまちでの気づき、課題抽出、コンセプト企画、課題解決提案という一連プロセスを実際にやってみようという実践型の大学院共通教育科目「KIZUKI」の成果発表会を行った。場所は、JR九州の本社ビルにある603会議室。大学の教室でないところがミソだ。会議室は、16名の学生(1名が学部2年、他は大学院生、うち1人は社会人院生)の他に、JR九州博多駅開発本部からは渡邊常務・馬場部長をはじめ2011年開業予定の新博多駅の計画推進にあたっておられる16名の方々、そしてオーディエンスとして是非ということで来て頂いた友人・知人、地元紙記者2名と、40名をこす人間で一杯となった。スーツ姿でこざっぱりきめた学生もいれば、この日のために(?)頭を丸めてきた学生あり、ジーパン&サンダルの若者ルックの学生あり。もしその場に突然まぎれこむひとがあるとすれば、「これって一体?」との不思議な感覚に襲われたにちがいない。
開始5分前
博多駅の未来をデザインする ─。このテーマをもとに、5月14日の授業スタートから7回の授業(ワークショップ)を重ね、今日の報告会となったというわけだ。スタート時点では、2チーム12名であったのが、2回目以降は3チーム16名となった。3チームの名前は、H.MGDRY(ハイパー・マグナムドライと読む)、UI-NET、F〓r Elise 。全学から応募してきた16名が、自分の専門とまったく無関係の実践プロジェクトに、専門の壁をこえてチームをつくって取り組み、そして2ヶ月後には、JR九州の本社でプロの方々の前でプレゼンテーションをしなければ行けない ─。 このプレッシャーは相当なものであったにちがいない。最終コーナーでは、授業日以外のミーティング、土日ワーキング、徹夜作業、ブログでの頻繁な情報共有と、傍から見ていてもすさまじいエネルギーが注入されていった。
結果はというと、事前の予想を3倍くらい上回る素晴らしい出来であった。3チームとも実に素晴らしい発表で、とてもカッコよかった。チームで一生懸命に考えたという事実が、オーディエンスの皆さんにびんびん伝る様が、前の席からみていても手に取るようにわかった。学生諸君はシロウトであるというハンディを乗り越え、ユーザーの視点で、自分の頭で、一生懸命考えたことを堂々と発表していった。そこが、JR九州の皆さんの気持ちにも伝わり、真剣に聴いていただくとともに、次々に厳しく温かい質問として帰って来たのだと思う。
また、オーディエンスの皆さんには、「コンセプトのきれ」「博多らしさの演出」「プレゼンテーション」の3つの観点から各チーム発表の評価をしていただいた。1位となったのは、『Iのある博多駅』ということで、「いきやすい・いつも安心・いこいの場」という「3つの『I』」をキーコンセプトに、統一色としての『和風POP』をアピールして発表した H.MGDRYチームであった。事前の準備過程では、もっとも地味な雰囲気であったが、しっかりした構成と抑制のきいたプレゼンテーションでだんとつの評価を勝ち取った。後で気がついたけれど、全員フォーマルウエアで決め、丸坊主の“勝負ヘア”がいたのもこのチームである。お見事!
H.MGDRYチーム
しかし、機能の複合化、異なる要素の出会いをテーマに『誘ワク 繋がる』というコンセプトで発表したF〓r Elise の提案もととも新鮮でよかった。とくに、発表の最後の4つのライフスタイル・ストーリーは、玄人うけのする出来栄えで大いに感心させられた。
F〓r Eliseチーム
また、『朝・昼・晩 みんなの博多駅』というコンセプトで、駅の多様なユーザーを想定し、「水と光」を用いた駅前広場の魅力づけの提案を行った UI-NETの提案も、とても色彩豊かでよかった。気の毒なのは、このチームだけ女性がいなかったことが、男っぽくなってしまった原因か(笑)。
UI-NETチーム
いずれにしても、わずか2ヶ月たらずの期間における学生の成長ぶりと、学生たちの底力、新鮮で伸びやかな発想を目の当たりにすることができ、まさに「教員冥利につきる」思いであった。嬉しいことに、JR九州の皆さんにとっても大変に刺激的であったようで、評価シートの感想記入欄ではいろいろとお褒めの言葉をいただいた。
昨年の西鉄大橋駅への取り組みもそうであったように、「駅」そのもののがもつフィールドとしての魅力が、学生たちの発奮の背景にあるのではないか。そうした思いから、JR九州さんには、できれば今後とも教育プログラムとして「博多駅」をテーマをとりあげ、実践的な「駅学」に向けた継続プロジェクトとして取り上げさせていただきたいとお願いしたことであった。
そして当初は、成果発表会にて終了! と思っていたが、急きょ予定を変更し、来週月曜日に再度集まり、プロジェクトの「振り返り」を行うことにした。「チームで学ぶ」ということの面白さと難しさ、あるいは、起動・上昇・停滞・下降・再上昇というチーム及び個人のプロセスをたどり直すことで、いろんな教訓やチームワーク活性化の方法をみんなで持ちより議論することにした。
このところやや疲れ気味の日々が続いていたが、若者の力に励まされる、人生の記憶に残る一時となった。アリガトウ!


 *「KIZUKI」スタート→ http://d.hatena.ne.jp/rakukaidou/20070514
 *「KIZUKI」交流サイト→ http://usi.comlog.jp/party/2/
    (学生たちの取り組みの足跡がたどれます)