自由の魔女が舞い降りてきた!

本件、田村さんのブログは「魔女が来たりて人が集う!」ということで始まっている。当方は、少しだけ差別化しよう(笑)。
作家が作品にのりうつるのか、それとも作品が作家をつくるのか。この関係はよくわからないけれど、「魔女の宅急便」の作者である角野栄子さんは、どちらも同じくらいありかなと思わせる不思議な作家だ。
さて、昨晩の子ども学連続講座 Vol.4 は「魔法のデザイン コトバのデザイン」というタイトルで、“魔女”を囲んで行われた。魔女の出で立ちは、1960年代にパリかどこかで4200円で買われたという、赤基調の、まわりをぱっと明るくする素敵なワンピース。前回の講演の際もそうだったけれど、服、靴、メガネ、ヘアスタイルを、人格や生き方とぴたり同調させるかたちで身にまとわれている様には言葉を失ってしまう。
「魔法のデザイン コトバのデザイン」というタイトルは、何かを刻み出していくような、とんがった響きがあるけれど、角野さんは企画者の意図をまっすぐに受け止め、1時間あまり、凛とした柔らかい声で独自のデザイン観を展開されていった。
「デザイン。それは人の願いがかたちになったもの」。冒頭から、角野さんの言葉はストレートに、デザインの本質をぐぐっとつかみだしていった。そして「見えない世界から、かたちをたぐりよせる」ことに、物語ともつながるデザインの役割があるとおっしゃる。そこにはワクワク感が宿っていて、ものの生まれる瞬間に固有の不思議がある、と。
今回の“魔女”講演で感動したのは、角野さんの幼少から最近に至るまでの言葉体験の紹介だ。自分ではじめて本を読んだ、誇らしくうれしかった時のことを今も覚えておられるというのだ。そして、読むことで立ちのぼってくる風景やリズムが、言葉の魔術師である角野さんの原体験・原エネルギーになっているとのこと。自分という存在が皮膚で味わった言葉でできていることを実感されることしばしばで、つい最近も小室等(“魔女”は彼の聞き出し役としての資質を絶賛)との対談のなかで、50年近く前に接した歌詞を、突然に「フ、フ、フ、と泡がわくように」思い出すという経験をしたそうだ。宮沢賢治の本が言葉の魔力に充ちていて、賢治の言葉がすぐのりうつるので、仕事をしている間は読まないようにしているという話も面白かった。言葉をはじめ、人の力ではどうにもならない大きな力を感じつつ、自分のなかからものを生みだしていく、ものは人の悲しみからも生まれるのよ・・・。ものが生まれてくる瞬間の、作家ならでは神秘の体験談は聞いてて嫉妬を感じるほどにキラキラとしていた。
そして“魔女”のお話は「ワクワクしましょ。そこからデザインと魔法が生まれるの」という言葉で終わった。
後半、目黒さんとのトークセッションでは、角野さんのファンタジー論を1年ぶりに伺うことができた。
角野さんはファンタジーをささえるものを一言で、「もしかしたら」の気持ちと表現された。見えない世界を想像するよろこびが、ファンタジーを生みだしているとのこと。しかし、その後の「ファンタジーこそリアリティが必要なの」というのは、角野栄子ワールドの真骨頂である。

終了後は、もろもろの打合せのために来福されるということで、講座にお誘いした寺岡寛さんも含め、目黒さん・田村さんの“定宿”であるLAGONにくりだし、“魔女とお酒を楽しむ会”にしばし興じた。そこでも、いろんな話が炸裂し(表現がとたんに品が悪くなった ─ 笑)、あとはカミさん運転の護送車で家路についた。帰宅は1時を過ぎていたそうだ(笑)。


 *写真は田村さんブログへ→ http://blogs.yahoo.co.jp/kaorutamu/50652801.html