一言蒐集

清水眞砂子さんの「無言」へのこだわり

味わいながら聴く深い語りには、そうめったに出会えない。でもいったん出会うと、人はしばらくその余韻に酔いしれることができる。先日(10月29日)の子ども学連続講座での清水眞砂子さんの講演は、さまにそんな語りであった。 児童文学者として『子どもの本…

自由の魔女が舞い降りてきた!

本件、田村さんのブログは「魔女が来たりて人が集う!」ということで始まっている。当方は、少しだけ差別化しよう(笑)。 作家が作品にのりうつるのか、それとも作品が作家をつくるのか。この関係はよくわからないけれど、「魔女の宅急便」の作者である角野…

この時代と社会を動かしている言語感覚

作家の高村薫さんが、西日本新聞の「社会時評」で「この時代と社会を動かしている言語感覚」の問題について書いている記事に、母の家でたまたま出会った(7月12日 朝刊)。冒頭部分の文章を書き出すと、 「メディアと通信機器の発達がつくりだすのは、言葉の…

倫理観の再生産ができていない

このところ、「教養」とか「倫理」とか、近代合理主義や産業社会の中では死語に近い状態であった言葉が、産業社会の衰退状況の下で再び脚光を浴びつつある。個人的にもそうした書籍を開いたり、机の周囲に集めたりということが増えている。こうした折、東大…

この世の知識は“かぶりもの”

「仏教から言えることは、『認知症のことなんか気にするなよ』ということです。どうしたって人間の体は壊れてしまいます。なぜ脳だけ特別扱いするのでしょうか? 脳で処理しているのはこの世で必要な知識だけです。この世の知識や関係性(親子、師匠・弟子、…

水の如く生きる

黒田官兵衛 如水『水五訓』 一、常に己の進路求めて、止まざるは水也 二、自ら活動して、他を働かすは水也 三、障碍に遭ひ激して、その勢力を百倍するは水也 四、自ら潔ふして、他の汚濁を洗い、然も清濁併せ容るるは水也 五、洋々として大海を充たし発して…

『手の間』の世界

友人の篠原久之君(篠ちゃん)から、『手の間』という雑誌が創刊されたと聞き、帰路、けやき通りのブックスキューブリックで求めた。一冊一冊、きちんとビニールで包装されている。自分だけの一冊。 表紙のコピー「ていねいな仕事 遠回りの行き方」というの…

進歩軸とトレンド軸

世の中には「進歩軸」と「トレンド軸」があると思います。進歩軸は理想的な社会に向かって真っすぐに進む線。トレンド軸は世の中の流行で、進歩軸に対して直角に振り子のようにふれるもの。トレンドには敏感であるべきですが、それが進むべき方向と思っては…

もう大学には期待しません

これも、しばらく鞄に入れて持ち歩き、二度三度と読み返した言葉 ─ 。もともとは中世ドイツの研究家でありながら、「世間」をキーワードにした日本文化論にも取り組まれてきた、阿部謹也さんの談話である。一橋大学や共立女子大学の学長も歴任されてきたお方…

魂のよか国に

水俣に住まれる『苦海浄土』の作家・石牟礼道子さんの新聞での言葉に目が止まった。言葉とともにある、道子さんのやわらかい眼差しと笑みをたたえた写真が素晴らしい。苦海に浄土をみつめてこられた方ならではのお顔である。しばらく鞄で持ち歩いた記事から…

化粧

この顔は整形外科医の作品なので、いまは基本的に化粧はしません。毎日化粧をしていると、脳が化粧をした顔を本当の顔だと思ってしまって、すっぴんでは外に出られなくなるんです。 ─ 中村うさぎ(作家) 自らの買い物依存症の体験を、赤裸々にそして日標的…

“自我の一部”となったケータイ

日本のように、個人の垣根が低い国民性の中に、ケータイのようなものが入ってくると、元来“ツール”であるべきものが、“自我の一部”になってしまい、今のような現象が起こるというわけです。 ─ 正高信男さん(京都大学霊長類研究所 教授) もともと「個」とい…